「東京を引き払いました」
「東京での学生生活はひとまず、ストップです。暮らしていくお金がありません。今はまったく将来が見通せません」
東京都内の私立大学3年生の酒井勇太さん(20歳、仮名)の言葉は切実だ。4月中旬に中野区のアパートの荷物をまとめ、滋賀県の実家に戻ってきた。東京を引き払うまでの月収入は、共働きの両親からの仕送り8万円とアルバイト代の約8万円。この中から家賃や光熱費、食費などを賄っていた。金銭的には比較的余裕があった。
状況は、コロナの感染拡大で一変した。
まず、アルバイト。大学2年生の時から通学先の大学で書類整理などをこなしていたが、感染拡大で大学構内は立ち入り禁止になり、「仕事がなくなった」と言われてしまう。契約社員として働いていた実家の母親の仕事も2日に1回となった。
さらに弟の大学進学もあった。実家の滋賀県から隣の京都府への通学とはいえ、私大の学費負担は軽くない。両親から「今後の仕送りは難しい」と言われたことで、2年間暮らしたアパートを引き払うことにしたという。
「迷いましたけど、実家に居れば、少なくとも家賃を払わなくて済む。しばらくは、オンラインでの授業が続くと思うんです。仕送りとバイトで生計を立て、卒業後は都内で就職したいと考えてましたが、まったくの白紙になってしまって」
再び東京に戻る場合、引っ越し代やアパートの敷金・礼金などで30万円以上が必要となる。その当ては「ありません」と酒井さん。本年度前期の授業料は、両親に頼ったものの、後期の授業料は「親にはとても頼めない」と言う。
「今は奨学金申請の手続きをしています。それで授業料などを賄って、何とか東京でもう一度、学生生活をやり直したい。全国民に一律給付の10万円はその足しにするつもりです」
ただし、10万円の一律給付だけでは足りない。それは自身でもよくわかっている。
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