業績急悪化の「パタゴニア」営業再開に慎重な訳

休業は早く、再開はどこより遅くの独自路線

だが、ネット通販だけで失われた売り上げのすべてを埋めることはできず、ほかの対策も必要になっている。すでに重役の報酬はカットされ、賃金カットは今後、幹部以外にも広がると予想されている。直営店スタッフの80%を含む従業員は90日間の一時無給休職となったが、健康保険は維持されている。一時休職とされた従業員が有給休暇の取得を予定していた場合には、有給休暇の消化を尊重するとした。

営業再開時期は安全性に基づいて判断することになる、とマーカリオ氏は言う。全世界で3000人を超す従業員を抱えるパタゴニアでは、マーカリオ氏の知る限り、新型コロナ感染症で入院した従業員はまだ1人も出ておらず、マーカリオ氏はこれを誇りにしている。同氏は早期に休業を決めたことが大きかったと考えており、営業の再開は慎重に進めたいと話した。

筋を通せばブランド価値は高まる

パタゴニアの北米担当小売責任者、ジョイ・ルイス氏は、今後パタゴニアの店舗で働いたり買い物したりする体験がどのようなものになるか、その構想を練るプロジェクトに関わっている。店舗から商品を発送する社員には「分隊スケジューリング」方式が導入された。4〜6人のチームが常に同じメンバーで働き、うち1人でも病気になれば、チーム丸ごと隔離する方式だ。

ルイス氏によれば、モバイル決済を使い、レジに列ができないようにする仕組みの実験が進む。同時に店舗内にいる人数を抑えるために、買い物客の予約制度も検討中だ。

パタゴニアは売上高の大幅な減少に直面しているが、マーカリオ氏は今回のコロナ禍は結果的にパタゴニアのブランド価値を向上させることになると考えている。「長持ちする製品を購入しよう」という動きが、特に若い世代で強まるからだ。今回の危機はある意味で、人々に「大自然やきれいな空気、きれいな水の価値を思い起こさせた。当社がこうした動きを少しでも(社会的な)善に結びつけることができるのなら、まだ希望は残されている」。

たとえコロナで企業規模が小さくなったとしても、パタゴニアは「自然を守り、気候変動を否定する政治家を落選させる」活動を続けていく、とマーカリオ氏は話す。

「パタゴニアはシャットダウンを最初に実行した企業の1つだった。そして、どこよりも遅く営業を完全再開する企業になるのかもしれない。でも、そんなことはどうだっていい」とマーカリオ氏は言う。「当社は従業員に対して、できる限りのことをするつもりです」

(執筆:Sapna Maheshwari記者)

(C)2020 The New York Times News Services

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