業績急悪化の「パタゴニア」営業再開に慎重な訳

休業は早く、再開はどこより遅くの独自路線

小売業界でパタゴニアはその経済的な成功に加え、気候変動や公有地の使用問題について進歩的な姿勢を堂々と示すことで名声を築いてきた(公有地使用問題については、ユタ州南東部のベアーズ・イヤーズ国定公園を保護しようとトランプ大統領を提訴したことでも知られる)。この非公開企業は大量消費の蔓延を公然と批判しながら、フリースやキャンプ用品の販売で毎年およそ10億ドルを売り上げている。

パタゴニアは「B Lab」という非営利団体から「B Corp(Bコーポレーション)」の認証を受けており、大手上場企業とは異なる指針に従っている。Bコーポレーションの認証を取得するには、株主だけでなく、「社員、コミュニティ、環境」の利害も考慮するというB Labの要件を満たさなければならない。

「社員をサーフィンに行かせよう!」で有名なパタゴニアは、従業員が日中に勤務を休んでサーフィンに行くことを許す企業であり、職場の託児所も充実している。

社会的企業の意地

パタゴニアブランドのこうした方針が今、パンデミックの試練にさらされている。同社は今後、ビジネスが縮小する可能性があることを認めているが、そうした厳しい経営環境の中で、社員の健康や収入も両立させていかなければならないからだ。

パタゴニアは以前から直営店をコミュニティーが集う場所と位置づけてきた。顧客にとってパタゴニアショップは、単にアウトドア用品を購入する場所にとどまらず、ドキュメンタリー映画の鑑賞や環境活動家のトークイベントへの参加、アウトドア用品の修理など、さまざまな活動の拠点になっていた。直営店を休業してから同社は、ヨガセッションや家庭菜園の講座をオンラインで提供するなど、得意客とのつながりを維持しようと試みてきた。

とはいえ、新型コロナが小売業界に与えた打撃は強烈だ。パタゴニアも例外ではなく、北米の売上高は50%減少した。パタゴニアは直営店や自社サイト以外でも商品を販売しており、全売上高の約半分を山や川、海に近いローカルのアウトドアショップのほか、大規模アウトドア用品店「REI」、大手百貨店ノードストロムといった全国チェーン店向けの流通に頼っている。しかし、非直営のパタゴニア商品取扱店は、コロナ禍でどこも大打撃を受けている。

「当社は小売業界の光かもしれないが、(コロナと)無縁でいられるわけでも、無敵なわけでもない。今回は当社も大打撃を受けている」とマーカリオ氏は話した。「このような事態の中で、自社の価値観を守りながら、どうやって社員やコミュニティーの面倒をみていくか。これが当社の直面している課題です」

パタゴニアはネバダ州リノにある配送センターを子細にチェックした後、4月9日にオンラインによる注文の受け付けを静かに再開した。社員の検温を徹底したり、退室をずらしたりする対策に加え、多くの場所で従業員同士の間隔を30フィート(約9メートル)に広げた。同社が「Back to Business(営業再開)」のメールを顧客に送信したのは、4月20日のことだ。

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