「新型コロナ治療薬」の開発はどこまで進んだか

ウィズコロナ・ポストコロナの米国企業(2)

同社は、カナダのバイオベンチャー、AbCellera Biologicsと新型コロナウイルス感染症の治療と予防のための抗体の共同開発を行うことも発表した。AbCellera社は、回復した新型コロナ患者の血液サンプルから500万個以上の免疫細胞をスクリーニングし、新型コロナウイルスの抗体パネルを発見している。

この提携により、今後の開発・製造・販売の主導権はイーライリリーに移ることになる。4カ月以内に臨床試験に進むことが目標だ。

超希少疾患の治療薬の開発に特化したバイオ創薬企業のアレクション・ファーマシューティカルズ(ALXN)は、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の治療薬に注力している。現在は、特定のタンパク質の働きを選択的に阻害する補体阻害剤「ソリリス」が収益の柱だが、同じくPNHの治療薬として新薬「ユルトミリス」が日米で承認され、急成長してきた。

その「ユルトミリス」に関して、新型コロナウイルス感染症の重症肺炎患者を対象にフェーズ3臨床試験が開始されることとなった。診断数の多い国を中心に、約270人の患者に対して5月中にも試験がスタートする予定だ。

同じくバイオ創薬企業のリジェネロン・ファーマシューティカルズ(REGN)は、フランスの製薬大手サノフィと共同開発した関節リウマチ治療薬「ケブザラ」の臨床試験を実施している。

また、新型コロナウイルスの予防と治療を目的とした新規の治験用抗体カクテルの開発が進んでいることも明らかにした。新型コロナから回復した人から膨大な量の抗体を分離し、それぞれ効力や資質を判断し、その中から上位2つを治療のために選択するという技術だ。同社は、この技術を用いてエボラウイルス感染症の治療薬を開発した実績を持っている。

ワクチン開発でも複数の動き

4月中旬から株価が急騰しているのが、モデルナ(MRNA)というバイオベンチャーだ。

同社は2010年に創業。メッセンジャーRNA(リボ核酸)を活用した手法で、感染症や免疫疾患、希少疾患などの治療薬やワクチンを開発している。現在、開発中の新薬候補が21あり、うち13は臨床試験段階にある。この中の1つが、新型コロナウイルスのワクチン候補である「mRNA-1273」だ。

同社とアメリカ国立衛生研究所(NIH)は1月に「mRNA-1273」の配列を決定し、臨床試験に向けた準備をスタートさせると、3月にはアメリカ食品医薬品局(FDA)の認可を得て、フェーズ1臨床試験を開始した。

4月16日に開発加速と生産能力拡大のため、アメリカ政府から4億8300万ドルの資金提供を受けることを公表。これをきっかけに株価の急騰が始まった。5月7日にはFDAがフェーズ2臨床試験を許可しており、約600人の参加者による試験が始まる見込みだ。さらにフェーズ3に向けた準備も進んでいる。

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