「新型コロナ治療薬」の開発はどこまで進んだか ウィズコロナ・ポストコロナの米国企業(2)

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そもそも、ギリアド・サイエンシズとはどういう会社なのか。

1987年6月に創業した同社のミッションは「まだ医薬ニーズの満たされていない分野において、革新的な医薬品を発見し、開発し、商業化すること」(同社のホームページ)とある。

HIV(ヒト免疫不全ウイルス)やB型・C型肝炎ウイルスの感染症治療薬・予防薬の開発により、世界有数のバイオ医薬品メーカーに成長。現在では、日本を含む世界35カ国以上で、ウイルス性疾患、炎症性・線維性疾患、がん領域を主な重点領域として事業を展開している。

以前は「ハーボニー」や「エプクルーサ」などのC型肝炎治療薬が収益の主柱だったが、ジェネリック医薬品の登場などで減少。現在は「ゲンボイヤ」「ビクタルビ」といったHIVウイルス治療薬が売上高の4分の3を占めるまでに拡大している。

なお、インフルエンザの治療薬として有名な「タミフル」の特許を持っていることでも知られている。

「レムデシビル」に関しては、治験中の製品を含む、150万回投与分(投与期間10日間として14万人分相当)を無償提供することを表明。それ以後の価格についても、世界各国政府や患者のために利用しやすい手ごろな価格で提供できるよう尽力するとしている。

かつて、C型肝炎治療薬「ソバルディ」やHIV治療薬「ツルバダ」の価格が高すぎるとして批判を浴びたことから、三たびの高額批判、さらにはコロナウイルス感染拡大の収束が見えない厳しい環境の中で、利益を得ることに対する批判をかわしたい狙いも透けて見える。

大手からベンチャーまで総力戦

ほかの企業はどうか。

バイオ製薬の大手アッヴィ(ABBV)は、新型コロナウイルス感染症の治療薬として、HIV治療薬「カレトラ」「アルビア」の抗ウイルス活性、有効性や安全性を確認するための臨床研究を行っていることを明らかにしている。

アッヴィは2013年に、ビタミンや麻酔薬、カテーテルなどの医療機器を手掛けるヘルスケア大手のアボット・ラボラトリーズから分離して誕生した。免疫疾患やがん、C型肝炎などのウイルス疾患などを重点領域としているが、2015年にファーマシークリック社を買収し、血液がんの治療薬「イムブルビカ」を獲得した。

その「イムブルビカ」も、新型コロナウイルス感染症における肺不全の治療薬として、有効性を確認するための試験が始まっている。

イーライリリー(LLY)はアメリカ国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)との共同治験において、中度から重度の関節リウマチ患者向けの抗炎症薬「オルミエント」を対象とした試験を実施すると発表した。

新型コロナウイルスに感染した入院患者に対し、「オルミエント」の有効性と安全性を確認することが目的。4月からアメリカでスタートし、その後、ヨーロッパやアジアへ拡大させ、2カ月程度で結果が出る予定だという。

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