自動運転ついに解禁、事故の責任は誰がとる? 自動運転法制の専門家、中山教授に聞いた

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――民事責任は何が違うのですか。

対人についてはもともと自賠法という法律がある。被害者の救済をすぐに行うために、運行供用者に過失、つまり不注意やミスがなくても賠償の責任を負わせている。運行供用者とは自動車の運行を支配し、運行からの利益を得ている者のこと。一般的には所有者を指す。

この法律を適用すると、自動運転使用中だった場合、所有者が一旦は保険などを使って支払いをする。その後、車に欠陥があれば所有者や保険会社などが自動車メーカーに支払いを求める流れになるだろう。政府の有識者会議もこの方向だ。

対物については自賠法が適用されない。なので、刑事責任とほぼ同じ判断になるだろう。立証の責任を負うのが被害者側になるのでハードルが高い。ドイツなどでは自賠法に似た法律で対物事故までカバーしている。日本でも検討する必要がある。

完全自動運転時代にはAIを罰する?

――今回の改正道路交通法が想定している自動運転はレベル3ですが、いずれは完全な自動運転車が登場します。

今はあくまで過渡期。完全な自動運転になる際には新しい制度が必要だと考える。実際、刑法学会ではAIの処罰についても議論が出ている。今後機械学習が進み、発売後にも車が自ら学んで自動運転を進化させていくようになるだろう。そうなれば、その車が起こす事故はメーカーの責任とも言いがたい。

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現状、アメリカなどではプログラムを消したり車を破壊したりすることがAIに対する刑事罰になる、との意見などが出ている。被害者感情を落ち着かせるための報復的な刑罰の考え方だ。この考え方はやや乱暴で私は反対。再発防止の観点から見ると意味がない。

とはいえ、議論は必要。今後はこうした法律の新しい形についての議論が盛んになってくるだろう。

中野 大樹 東洋経済 記者

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なかの たいじゅ / Taiju Nakano

大阪府出身。早稲田大学法学部卒。副専攻として同大学でジャーナリズムを修了。学生時代リユース業界専門新聞の「リサイクル通信」・地域メディアの「高田馬場新聞」で、リユース業界や地域の居酒屋を取材。無人島研究会に所属していた。趣味は飲み歩きと読書、アウトドア、離島。コンビニ業界を担当。

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