自動運転ついに解禁、事故の責任は誰がとる? 自動運転法制の専門家、中山教授に聞いた
――今回の改正道路交通法を見ると、自動運転中の前方注意義務は免除された一方で、安全運転配慮義務は課されています。事故時の刑事責任はどう判断されることになるのでしょうか。
自動車事故の場合の刑事責任で主なものは、自動運転過失致死傷(懲役七年以下、または罰金100万円以下)や危険運転致死傷(懲役15年以下または罰金100万円以下)など刑法上(自動車運転処罰法含む)決まっているものがある。
いずれの場合でも、刑事責任の場合は運転手に過失、つまりミスや不注意がないと運転手の責任が問われることはない。この過失の判断に道路交通法を守っていたかが大きく関わってくる。安全運転義務が残った意味を私なりに考えると、整備不良への対応や、レベル3ならではの自動運転システムから(ドライバーへの)の運転引き継ぎに備えさせるためのものだろう。
つまり、整備不良、自動運転ソフトのアップデートをしていなかった、居眠りをしていたなどの場合には自動運転中でも運転手の過失が認められる可能性が高い。他には走っている途中に異音がしたのに放置した場合などが当てはまるだろう。逆に言えば、そうした条件に該当しない場合には責任を問われる可能性は極めて低いと考えられる。
レベル3特有の問題
――自動運転ならでは、の問題はありますか。
自動運転というよりも、レベル3ならではの問題がある。一部の研究者は「レベル3とは自動運転機能の使用中はレベル4の完全な自動運転、その先(自動運転機能を解除してドライバー自身が運転している時)はレベル2の普通の車。だからレベル3の概念は必要ない」という人もいる。だが、実際はそれほど単純ではない。
今回解禁されたレベル3は、自動運転機能の機能限界(設計上決まった走行条件外のとき)になれば、人間が運転を代わる必要がある。現実問題としてドライバーが瞬時に運転を引き継ぐのは難しく、その準備に必要な時間を考えると、引継ぎまで10秒はないと厳しいというのが一般的な認識になっている。
10秒といえば高速道路ならかなりの距離を進む。この間に事故が起きたら誰が責任を負うのか曖昧だ。運転手はすぐに運転を代われる状態で待機している必要があり、すぐに対応できずに事故が起きた場合には、運転手が責任を問われる可能性があるとみている。
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