自動運転ついに解禁、事故の責任は誰がとる? 自動運転法制の専門家、中山教授に聞いた

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――運転手に過失がない場合は、車を造った自動車メーカーの責任に?

そうではない。まず、法人は刑事罰の対象ではないので、実質的には社長や開発担当者などが対象になる。だが、品質に問題があった、というだけでは難しい。

過去の事例を挙げると、三菱ふそうのトラックでタイヤ事故が起きた時、メーカーの人間に刑事責任が問われた。不具合そのものではなく、リコール隠しを理由に関係者が刑事責任を負った。複数の同種の事故が起きているのに放置した責任を問われたわけで、そうした明確な過失や故意がなければ、刑事責任は問えない。

さらにいうなら、自動運転に使われる電子工学の分野にはバグが付き物だ。バグには再現ができないものもある。そうした再現不能なバグによって事故が起きた場合、メーカー、運転手含めて誰にも過失がないことになる。ほかの法律でも起こることだが、刑事責任を誰も問われない、という状況が起こることもありうる。

テスラの自動運転機能使用中に事故

――メーカーの責任を問うような議論はないのですか。

動きはある。実は3月31日に横浜地裁で、日本国内でテスラの自動運転機能使用中に居眠りをして事故を起こした事件の判決が出た。今回はあくまで運転支援機能付きの車で自動運転車ではないが、事故を起こした運転手側は「眠気を起こすような設計をしたテスラ側に責任がある」として無罪を主張した。裁判所は執行猶予付きの有罪判決を下したものの、運転手の主張も一応、論理としては成り立っている。これは重要な論点だ。

アメリカでも似たような事例があり、アメリカの事故調査委員会も問題視している。人間は自動運転機能が快適なほど油断する。設計上、集中を切らさないようにする必要がある。メーカーにこうした責任を求める動きが今後強まってくるだろう。

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