「山村美紗」ハイペースで書き続けた泣ける理由 実はとても不器用だったトリックの女王

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プロデューサーと監督はさすがに気が引けて、その日の撮影を中止することを申し出る。しかし紅葉は「仕事の約束は絶対に守らなくてはならない。たとえそのために死ぬことになっても」という母の言葉を持ち出し、撮影続行を求めた。

締切に追われて死んだ原作者の娘にそう言われては、続けるしかない。撮影が終わった瞬間、主演女優のかたせ梨乃は無言で紅葉を抱きしめた。

本当は不器用だったトリックの女王

弔問客が押し寄せる怒涛の通夜が終わり、棺を囲むのは山村紅葉とその妹、西村京太郎、山村美紗ドラマの常連俳優である若林豪だけになった。おりしも、「山村美紗サスペンス」が始まる時間。西村京太郎の提案で、美紗の顔を覆っていた白い布を外して一緒にテレビを観ることになった。

愛娘が出演する「山村美紗サスペンス 京都一条戻り橋事件 恋の為の犯罪か! 栄華の為の殺人か!」を、盟友だった作家と俳優、娘たちと一緒に棺の中で見守る。

殺人という陰湿なことが起きるからこそ、ミステリーの舞台設定は明るく華やかにしたいと考えていた山村美紗らしい最期の迎え方だった。葬式は生前好きだったひまわりと胡蝶蘭で埋め尽くされ、受賞パーティのような華々しさだったという。

母の死後、紅葉はテレビ関係者から「紅葉は私のコネで出ている女優だから、原作がたくさんないと困るでしょう」と生前の母が語っていたことを聞かされた。プライドの高い母が、知り合いの俳優らに「娘をお願いします」と頭を下げていたことも。

健康を顧みずハイペースで執筆を続けていたのは、ダメ出しばかりしていた娘のためだった。警察に捕まったら地下道を掘ってでも助けてあげる。その気持ちはきっと本物だったのだろう。なんて不器用なトリックの女王。

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