「ピンチはチャンス」
コロナ禍で多くの企業が苦境に立たされる中、最近よく聞かれる言葉です。ただ、会議のオンライン化やハンコの廃止といった業務レベルの動きはあるものの、全体的には「前を向いて難局を立ち向かおう」という精神論や「悪いことばかり続かない」という気休めにとどまっています。
どういうピンチをどうチャンスに変えれば良いのでしょうか。今回は、「ピンチはチャンス」を実践するために「いま」企業に求められる3つのことについて考えてみましょう(以下は、従業員の健康・安全と事業の存続を確保した上での話になります)。
M&Aに積極的なアメリカ、消極的な日本
4月22日、M&Aについて、日米を代表する企業で対照的なニュースがありました。米フェイスブックは、インドの大手財閥リライアンス・インダストリーズの傘下企業に57億ドル(約6,100億円)を出資すると発表しました。フェイスブックにとって創業以来2番目に大きいM&Aです。
GAFAのひとつであるフェイスブックは絶対的な存在だと思い勝ちですが、個人情報保護が厳格になり広告中心のビジネスモデルに陰りが出ています。今回の出資によって、将来世界最大の規模となるインド市場で電子商取引(EC)分野を開拓し、成長軌道を取り戻そうというねらいです。
一方、日本では、日本電産の永守重信社長が、これまでの利益至上主義の経営を改めるととともに、M&Aについて次のように述べました。「今はキャッシュ・イズ・キング。〔中略〕先が見えるまで安易な投資はしない方がいい」(2020年4月20日の日本経済新聞より)。
過去M&Aで大失敗を繰り返してきた日本企業が多い中、日本電産は例外的なM&A巧者。レンズシャッター専門メーカーのコパルや、電子部品メーカーの三協精機など経営難に陥った同業他社を次々と買収し、立て直し、一代で1兆円企業グループを築きました。
その永守社長が、「M&Aよりも守りを固めること」に舵を切ったわけです。またもう一つのM&Aの雄であるソフトバンクも、ビジョンファンドで巨額の評価損を抱え、すっかり意気消沈です。
新型コロナウイルスという未曽有のピンチに直面し、M&Aを加速させるアメリカ企業とM&Aから距離を置く日本企業。対照的な動きになっています。
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