M&Aはリスクが大きく、成功し企業を飛躍的に発展させる場合もあれば、失敗し、大打撃を被ることもあります。M&Aの成功には、綿密なデューデリジェンス(買収監査)の実施など色々とポイントが指摘されていますが、一つだけ鉄則を挙げるなら、「高値掴みを避ける」ことです。
ある企業を「どうしても買いたい」と考えると、プレミアムを付けて本来の価値よりも高い価格で買うことになります。高値掴みをしてしまうと、買収後によほどの改革をしない限り企業価値を高めることはできません。逆に、本来の価値よりも安値で買うことができれば、容易に企業価値を高められるわけです。
日本電産のM&Aが成功した理由
かつて永守社長も、日本電産から買収を打診するのではなく、「経営難に陥った相手から日本電産に助けを求めてきたら買う」のが成功の秘訣だと説明しています。そして、このやり方を長年実践し、成功を収めてきました。
現在、コロナ禍で多くの企業が苦境に陥り、株価が本来の価値を大きく下回っています。生き残りのために身売りする企業も増えるでしょう。これは、有望な企業を安値で買収するチャンスとも言えます。日本電産にとっては、M&Aから手を引くどころか、創業した1973年のオイルショック以来のチャンス到来ではないでしょうか。
ピンチをチャンスにするために「いま」企業に必要なことの1つは、M&Aです。日本企業は、「AI」「5G」「フィンテック」といった先端分野や成長するアジア市場の開拓で欧米・中国の企業に大きく遅れを取ってしまいました。コロナ禍のいまは、M&Aで時間を買い、遅れを一気に取り戻すチャンスとも言えます。
同様に2つ目に、人材獲得のチャンスでもあります。日本ではよく「企業は人なり」と言われ、多くの企業が「人を大切にする経営」を実践しているとされます。ただ、実際には従業員をクビにしないというだけで、人材の質には意外と無頓着です。
採用では、博士・難関資格保有者など高度な知識を持った人材や外国人の採用に消極的です。人材育成では、OJTで基本作業を教えるところで止まっています。報酬・昇進では、年功序列が色濃く、従業員の成長機会・成長意欲を奪っています。
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