銅価格が急落、中国から広がる"赤い"不安 爆食の陰で浮かび上がる、もう1つの「影の銀行」
常態化する銅転がし
今世紀最初の7年間、銅価格は4倍になった。むろん、原動力は中国の“爆食”だ。リーマンショックで瞬間的に落ち込み、中国の4兆元の刺激策で急回復。だが、4兆元の効果はせいぜい2年だ。
その後も高値圏で推移したのは、主軸が金融取引にシフトしたためだろう。全輸入量の3分の1がこの手の取引に回っている。「国有企業も製錬大手も皆、専用の会社を持っている。保税倉庫に銅を置いたまま、何度も転売されている」(商社トレーダー)。
皮肉にも、目先、実体的な需給関係は悪くない。規制強化でインドネシアの銅輸出は止まり、鉱山の暴動やストで供給は安定していない。「新しい鉱山の生産コストは6000~7000ドルが前提。中国が長期契約を削るという話もない。市況は7000ドルに戻る」(非鉄大手の営業部長)。
だが、今や命運を握るのは実体的な需給ではない。公式統計分だけで中国の銅在庫80万トンはLME在庫の3倍。ほかに捕捉不能の“影の倉庫”があり、それらの上に膨大な金融取引が構築されている。
取引の連鎖が途切れたら、在庫投げ売りのリスクが高まる。しかも、金融取引の大もとのLCを発行するのは世界の一流銀行だ。中国業者がLCの返済に失敗すれば、危機は中国国内にとどまらない。
「今すぐ起こることはないが、(金融取引が)どこにどうつながっているのか見えない」(大手トレーダー)。“赤い”不安が広がっている。
(「週刊東洋経済」2014年4月12日号<4月7日発売>「価格を読む」に加筆)
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