急成長「インドネシア鉄道メーカー」の熱い現場 輸出車両で活況「INKA」、自動運転電車も製造
車両本体以外にも、INKAが販売を強化しているものがある。それは通勤電車向けの大容量集中冷房装置である。
客車向けの分散冷房装置は従来から生産されていたが、「I-COND ACI-4202」として集中冷房装置の国産化を果たし、空港アクセス鉄道の特急電車から搭載を始めた。
今後需要が高まる東南アジアを中心とした地域の都市鉄道では冷房装置は必須であり、さらなる輸出拡大に向けたINKAの意気込みを感じる。冷房装置単体での販売もしており、フィリピン国鉄に譲渡された元JR203系の冷房装置(AU75)が一部置き換えられているほか、ジャカルタでも205系1両に試験搭載しており、今後当地でも置き換えが進む可能性がある。製造はINKAの子会社、IMSが手がけている。
技術者に聞くINKAの現状
工場を一通り見学したのち、技術開発部マネージャーのディアン氏、そして、現在唯一の外国人として同社に籍を置く技術専門アドバイザーの江本隆氏にインタビューした。(以下敬称略)
――INKAの強み、そして弱みは。
江本:強みは設計から一貫して手がけることのできる東南アジア唯一の車両メーカーであること、そして賃金がジャカルタと比べても安いこと。逆に弱みはINKAを支える裾野産業がまだ少ないこと。安いパーツを海外から買い付けて組み立てることになってしまう。せっかく設計をしても、その設計が生かされないことがある。
――品質や技術力向上のためにどのような取り組みを行っているか。
ディアン:これまで日本のメーカーに技術者を派遣し、いくつかのトレーニングを行ってきた。例えば東芝での冷房組み立てトレーニングや、日本車輌製造での製造工程のトレーニングなどだ。
また、江本さんのように経験豊かな技術者を招聘している。過去にはボンバルディアやシーメンスからの技術者が在籍していたこともある。CC206形電気式ディーゼル機関車の製造時、GE(ゼネラル・エレクトリック)のノックダウンで製造する予定があり、技術者をアメリカに派遣したが、同国の工場で生産レーンに空きができたため、INKAでの製造は行わなかった。
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