急成長「インドネシア鉄道メーカー」の熱い現場

輸出車両で活況「INKA」、自動運転電車も製造

気になるのは今後の動向だ。KAI向けステンレス客車は昨年末に全車納車され、バングラデシュ向けも2020年中には製造が完了する見込みである。このままだと、来年以降に一気に生産レーンが空いてしまう。ここはINKAも認識しているようである。

ただ、最新の報道によれば、バングラデシュからのさらなる追加受注も目指すとされており、これが実現すれば1000両規模となる。憶測にすぎないが、INKAの希望的観測からすると、このタイミングでジャカルタ首都圏向けの新型通勤電車の製造にも着手したいものと思われる。仮に受注できれば、老朽車両の置き換えと増備のため、数年間は年間100両程度を製造することができる。

そして、その先に見据えるのはジャカルタ―スラバヤ間の高速特急気動車(狭軌による時速160km~200kmでの走行を想定)である。JICAが中心となって事前調査が進んでいる在来線高速化プロジェクトだが、石井正文駐インドネシア日本大使の発言によれば、2022年にも着工とのことであり、非常に現実味を帯びてきた。

しかも、インドネシア政府はこれに対して国産車両の導入を強く要望している。となると、INKAはどんな形であれ、プロジェクトに参画することになる。

ただし、高い性能、高い安全性が求められる高速気動車の生産には、何らかの形で他国からの技術的協力が必要になるものと思われる。はたして、そこに日本は加わることができるのか。それとも、あくまで輸出向けと発表されているシュタドラーとの提携の真の目的はここにあるのか、あるいは再びボンバルディアがINKAと組むのか。

日本はINKAとどう付き合うか

工場内を歩いていると、作業員から「おはようございます」と日本語で声をかけられることがある。これは、現場技術者の中には技能実習生として日本で働いた経験の持ち主が一定数いるからだ。

マディウンの工業高校卒業生の一部は例年、技能実習生として日本のいくつかの車両メーカーで受け入れをしてもらっている。技能実習から帰国後に改めて就職活動をするわけだが、経験者のほうがINKAでの採用に当然有利に働いているようである。設計、及び技術部門に占める割合は3~4割ほどだそうだ。彼らは純粋に日本が好きであるし、日本の高い技術力、品質を知っている。そして、よりよい製品を作ろうとしている。

しかし、実際にビジネスとして天秤にかけられたとき、日本製品があまり採用されていないという実情がある。彼らが日本で習得した技術を最大限発揮し、そしてジャカルタ―スラバヤ間高速化という晴れ舞台で日本とインドネシア両国への恩返しをできるようにするためにも、日本側は政府ぐるみで、今後INKAとどのようにお付き合いすべきなのか、早急に考えるべきであろう。

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