追い風吹く半導体製造装置に死角はあるか コロナ禍でもデータセンターや5G投資が活況

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コロナウイルスの感染拡大によって、テレワークなど在宅勤務が広がり、パソコンなどの需要が増しているほか、爆発的に増える通信量に対応するためにデータセンターの投資も活発化している。これらには最先端の半導体が欠かせないため、半導体メーカーも今のところ投資を緩める動きが見えない。

ただし、先行きには不安要素が見え隠れする。もともと半導体業界は空前の好況だった2018年から一転、2019年は米中貿易摩擦の影響も受けて、業績拡大にブレーキがかかった。2020年は5Gの本格化で再び高い成長率を示すと期待していた。そこに振ってかかったのが新型コロナウイルスだ。

現状では、2019年に業界を牽引した台湾の半導体受託生産世界最大手TSMCが2020年も最先端プロセス向けの投資を高い水準で継続することに加え、今後は韓国サムスンなどによるメモリ投資も加わる予定だ。これまで価格相場が低迷していたメモリとDRAMが上昇に転じてきており、次世代品量産に向けた投資があるからだ。

スマートフォン需要が鈍化

テレワーク拡大などにより、世界中でやりとりされる情報量の増加が加速している。通信遅延を防ぐためには、データセンターの増強が不可欠だ。グーグルやアマゾンなどIT大手はすでに増強を進めており、そこで使われる大量の半導体に対する需要は今後も緩まないとみられている。

半導体メモリ、DRAMを製造するマイクロンの広島工場。DRAMはデータセンター向けの需要が高まっている(写真:マイクロン)

そうした中で懸念としてあるのは、足元で減少傾向にあるスマートフォン需要だ。アップルは4月30日、2020年1~3月のアイフォーンの売上高が前年同期比6.8%減となる289億6200万ドルだったと発表した。スマホ販売世界トップのサムスンでは2020年の販売台数減が予想されている。

スマホ向け通信半導体で圧倒的な強さを誇るアメリカのクアルコムは4月29日に発表した決算で、2020年1~3月期のスマホ需要は前年同期比で21%減ったとしている。テレワークの拡大でパソコンの販売は好調だが、世界経済が落ち込めば半導体業界が見込んでいた成長は見込めなくなる。

もう1つの懸念は、半導体特有の複雑な製造工程と関係している。高度な技術の塊である半導体を作るには基板であるシリコンウエハの形成からチップにするまでに400~600もの製造工程がある。それに対応した半導体製造装置を複数の企業が役割分担する形で作っている。

つまり、コロナウイルス感染拡大の影響でどこかの製造装置メーカーが生産不能に陥った場合、その影響は半導体生産ライン全体に及ぶ可能性もあるのだ。

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