レムデシビル「コロナ治療効果あり」で普及道筋 治験で確認、5月に日本で「特例承認」ありうる

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もう一方が、ギリアド社が行っていた治験だ。こちらの治験は投与群とプラセボ群と比較したものではなく、一定量を5日間投与した場合と10日間投与した場合を比較している。3月に始められたこの治験では中等度の患者6000人、重症の患者1600人が対象になっている大規模な試験だ。

今回データが発表されたのは、対象患者のうち中等度の患者397人のデータ。5日間投与が200人、10日間投与が197人だ。患者の半数が回復するまでの期間はそれぞれ10日と11日と、投与期間によって回復スピードに変化は見られなかった。

5日間投与で一定の治療成果が得られる

重症化してから5日間の投与で、10日間の投与と同じ効果が得られる、という結果の意味は大きい。レムデシビルは化学合成で作る飲み薬ではなく、細胞を培養することによって製造する注射剤のバイオ医薬品で、比較的製造に時間がかかる。パンデミックが拡大する中で、5日間投与で一定の治療効果が得られるのであれば、限られた製造能力を効率よく使うことができる。

一方、同じ4月29日、中国の研究者が実施した治験がイギリスの有力医学誌に発表されたが、この治験では、顕著な効果が見られなかったとしている。感染者237人を対象にレムデシビルを投与した群と、投与しなかった群との比較試験をしたが、感染者の減少で治験対象者が集まりにくかったことから途中で打ち切られた治験だった。

アメリカでの治験結果を受けて、今後、日本国内で見込まれるのが特例承認だ。一般的には、医薬品の承認は申請を行ってから最低1年はかかる。重要性が高く優先的に審査する医薬品でも、6カ月を要するが、レムデシビルは今年5月内に特例承認を受けるシナリオもあると見られており、そうなれば1カ月以内での超スピード審査となる。

特例承認を行えるのは海外ですでに承認・販売されている薬剤が対象だ。レムデシビルがまずアメリカで承認され、さらにギリアドが日本の当局にも承認申請を行うことが前提となっている。だが、現在、エボラ出血熱治療薬としてもレムデシビルを承認している国はなく、新型コロナ重症患者の治験結果を発表できるのは早くて5月中の予定だ。

今後、アメリカの当局が今回のデータのみで緊急使用許可を出して使用を認めるかどうかが、国内で5月内承認にこぎつけるかどうかのシナリオを左右しそうだ。

石阪 友貴 東洋経済 記者

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いしざか ともき / Tomoki Ishizaka

早稲田大学政治経済学部卒。2017年に東洋経済新報社入社。食品・飲料業界を担当しジャパニーズウイスキー、加熱式たばこなどを取材。2019年から製薬業界をカバーし「コロナ医療」「製薬大リストラ」「医療テックベンチャー」などの特集を担当。現在は半導体業界を取材中。バイクとボートレース 、深夜ラジオが好き。

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