「山谷・寿町」日雇い者が瀕するコロナ禍の憂鬱 感染者報告ないが、わずかな仕事さらに乏しく

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ヨコハマスタジアムも近い寿町では、約300メートル四方の中に120軒以上の簡易宿泊所がひしめく。部屋数は8000室超。減少傾向とはいえ、住人は約6000人に上る。

横浜・寿町(撮影:本間誠也)

前出の寿日雇労働者組合の近藤さんによると、住人の平均年齢は60歳以上で、8割以上が生活保護受給者だ。山谷とは異なり、寿町はインバウンドの外国人客やビジネス客らとも縁がなく、「典型的なドヤのマチ」という。ホームレスも50人近くに上る。

日本経済から取り残され、社会も関心を失ったかのようなエリア。そこにも、コロナの影響は出始めている。

施設は休止 ボランティアらは炊き出し拡大

「新型コロナウイルス感染拡大防止のため、娯楽室・敬老室を一時休止いたします。期間は4月3日から5月6日まで」。

山谷の城北労働・福祉センターにこんな張り紙が出たのは4月2日の午後だった。テレビコーナーや図書スペース、将棋コーナー、広い炊事場を備える本館地下の娯楽室は、ホームレスらにとって昼間、体を休めることのできる貴重な場所だ。

山谷や隅田川沿いでの野宿暮らしが10年近くになるという元鳶職の60代男性は「寒くて夜寝れなかった日は、娯楽室があったから助かった。インスタントラーメンを作ることもできるから、閉められて困ってる」と嘆いた。

寿町も同じだ。緊急事態宣言によって4月8日から、横浜市寿町健康福祉交流センターのテレビラウンジや調理室、図書コーナーなどが利用休止になった。

さらに、都内でも横浜市内でも、ホームレスを対象とした炊き出しや食事配布が相次いで中止になっている。「匿名で役所や保健所に電話して、炊き出しを止めさせようとする動きもあります。周囲の目が厳しいことは自覚しています」(都内のボランティア団体)。

こうした中、山谷労働者福祉会館活動委員会は4月3日から、炊き出しを増やした。それまでの週1回を土曜日以外の毎日とし、城北労働・福祉センター前で実施。月〜金曜は午前8時から、日曜は午後3時からでマスクも配布している。

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