岩田健太郎「手指消毒がコロナに1番効く理由」 「引き算の発想」欠如が日本人の疲弊を招く

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「トイレ掃除は、感染対策というよりも清潔感、感情の問題なので、うんちが付いてたらきれいにしましょう。トイレの便器や床を舐めたりする人はいないと思うから、あそこに病原体がいてもじつは構わないんです。靴の裏にノロウイルスみたいな病原体が付いていても、靴の裏を舐めたりしない限りは大丈夫です。でも、手はちゃんと洗いましょう。そしてトイレの掃除はやめましょう。それ、みんな疲れるから」ということを伝えました。

「引き算の発想」ができない日本人

この「みんな疲れるからやめよう」っていう発想を「引き算の発想」というんですが、日本にはこれがないんです。必ず足し算でいこうとする。引くことを知らないんです。

例えば、日本政府は新型コロナウイルスのための医療体制を確保するために、新たな病床を確保しようと言っています。

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ぼくなんかは、無症状の人を入院させるのをやめたらベッドが空くのに、と思うんですが、日本には足し算の発想しかないから、そうはならない。

とある指定病院では、3床ある指定ベッドに入院しているうちの2人は無症状だそうです。全く症状のない人のケアのために、たくさんの看護師や医師が目を血走らせて、寝不足で働かされている。そのせいで彼らが体調を崩したら、本来医療を受けるべき患者さんだって困りますよね。

だから、やらなくていいことはどんどんやめて、意味のあることにリソースを集中したほうがコロナ対策でも正解なんです。

岩田 健太郎 神戸大学教授

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いわた けんたろう / Kentaro Iwata

1971年、島根県生まれ。神戸大学大学院医学研究科・微生物感染症学講座感染治療学分野教授。神戸大学都市安全研究センター教授。ニューヨークで炭疽菌テロ、北京でSARS流行時、またアフリカではエボラ出血熱の臨床を経験。帰国後は亀田総合病院(千葉県)に勤務。感染症内科部長、同総合診療・感染症科部長を歴任する。著書に『「感染症パニック」を防げ! ?リスク・コミュニケーション入門』『予防接種は「効く」のか?』『1秒もムダに生きない』(以上が光文社新書))など著書多数。

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