グローバル経済から中国を分離すべき根本理由 コロナ危機後に「世界最高の知性」が訴える
グローバリゼーションの実験は80年代から90年代にかけては実にうまくいきました。しかしわれわれは行きすぎてしまった。そしてこの移民、資本移動、貿易を巡る行きすぎは、所得配分の最底辺に属する人々には後ろ向きな結果をもたらしました。忘れないでください。
カナダでもアメリカでも大半の欧州国でも、このリベラルな国際秩序の恩恵の大半は上位20パーセントの人々の手に渡り、本当に大きな果実はトップ1パーセントの人々がつかみ取りました。
所得分布の下位に属し、大卒未満で、比較的に未熟練労働者である人にとっては、この20年間は貧しいものでした。実際、暮らし向きは1999年当時よりも悪くなっているはずです。
そしてポピュリストたちがリベラルな国際秩序を攻撃するのはなぜか、彼らはどうして「グローバリスト」という言葉を悪口にしているのかを解き明かすなら、それは多くの人々が負け犬になっているからにほかなりません。
ドナルド・トランプに限らず、世界中の公職候補がこぞってグローバリゼーションはもうたくさんだと叫び始めています。巻き戻し調整が必要です。移民を制限しなければなりません。貿易協定を再交渉しなければならないのです。
中国が最大受益者の国際秩序を続けるのか
グリフィス:いくつか反論を試みさせていただきます。第一の論は、現在の国際秩序は大いに成功している、それはそれ自体が優れているばかりか、次善と思われる秩序よりもはるかに成功したではないか、というものです。
リベラルな国際秩序の伝統的な競争相手である中国やロシアの政体を見ると、金融や人間開発、そして社会のあり方としてぞっとします。次善の代替策が魅力を欠くのに、どうしてリベラルな国際秩序をかけがえがないと考えないのでしょうか。
ファーガソン:話をうかがっていて奇妙に思いましたよ、ラッドヤード。なぜなら、私の見るところ、リベラルな国際秩序のたっての受益者は、中華人民共和国とそれを率いる中国共産党だからです。
私はもうダボスへは出かけません。ダボスで習近平によるリベラルな国際秩序の擁護論を聞きたくはないからです。中国の共産主義者の口から自由貿易や資本の自由な移動について聞かされるのは奇妙な話です。
そしてこれは、リベラルな国際秩序のどこがおかしいのかを考える糸口になります。その最大の受益者──1980年代からこの方は間違いなくそうでした──は、政治的にはおよそリベラルとは言えない一党独裁国家なのです。
この秩序の最大の受益者は、カナダでもアメリカでも欧州でもなく中国です。中国は勝ち組でしたし、それがリベラルな国際秩序というもの自体への疑問をもたらしているように思われます。主たる受益者が一党独裁国家中華人民共和国であるなら、いったいどうしてそれをリベラルな秩序と言えるのでしょう。