日銀総裁は会見で「笑顔」を見せなくなった 欧米の中央銀行に追随して奥の手を繰り出す

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新型コロナの影響から景気の見通しは明るくない。国際通貨基金(IMF)は新型コロナウイルスの影響で2020年の世界経済成長率は前年比でマイナス3%になるとみている。日本の成長率はマイナス5.2%とされている。

日銀も成長率の見通しを引き下げた。展望レポートによれば、2020年度の実質GDPはマイナス3~5%としている。物価上昇率の見通しも2022年度にプラス0.4~1%と、これまで目標に掲げてきた2%に遠く及ばない。黒田総裁の任期中(2018年4月~2023年4月)の達成はまず無理な状況だ。しかもこれらの予想は2020年中に新型コロナの感染拡大が収束するという前提によってつくられている。世界的な収束時期が遅れれば、経済の回復は後ずれしていく。

今回、新型コロナ感染拡大に対する経済対策で、政府が補正予算で発行する赤字国債は23兆3624億円。コロナの影響が長引けば、追加的な経済対策を迫られる可能性が高い。そうなった場合、日銀の無制限の買い入れ姿勢を頼りに借金(国債発行)を増やし続け、国の財政規律が緩むリスクは小さくない。通貨価値の信認低下を通じて、インフレが起きたり、金融市場が混乱する懸念もある。

今後の政策余地はどれだけあるか

日銀は4月27日の会合で国債買い入れのメドを撤廃するほかに、CP(コマーシャル・ペーパー)・社債の買い入れ拡大と新型コロナ対応金融支援特別オペレーションの強化も決めた。

CP・社債については、買い入れ残高の上限を20兆円と約3倍に拡大したほか、発行体ごとの買い入れ残高の上限を引き上げ、残存期間も5年以下に延長している(従来の対象は残存期間が1年以上3年以下)。しかし、日本では社債市場はアメリカに比べて小さい。発行する企業も大企業が中心で、最も大きな打撃を受けている中小企業を助けることにはならない。

より重要なのは、民間の金融機関の支援だ。今回は新型コロナ対応金融支援特別オペの強化がそれに当たる。対象担保の範囲を企業債務から家計債務に拡大し、このオペの利用残高に相当する当座預金に0.1%の金利をつけるというインセンティブも設けた。

ただし、これで民間銀行がどれだけ融資を増やすのかは不透明だ。足元の融資は日本政策金融公庫や信用保証協会の保証がついた融資が中心となっており、民間の金融機関が自らリスクをとることには慎重だ。長らく続いた緩和環境で金余りの銀行も多く、日銀の支援がどれだけ後押しになるのかは疑問が残る。

これらの施策について前出の木内氏は「日銀ができることの最大限だが、効果は限定的だろう」とみる。日銀はあらゆる手を尽くして金融政策を行っているが、今後ますます経済が悪化した場合には、さらなる対応を迫られる。限られた選択肢の中でどう対応するのか、日銀にとって気の抜けない厳しい局面が続く。

藤原 宏成 東洋経済 記者

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ふじわら ひろなる / Hironaru Fujiwara

1994年生まれ、静岡県浜松市出身。2017年、早稲田大学商学部卒、東洋経済新報社入社。学生時代は、ゼミで金融、サークルで広告を研究。銀行など金融業界を担当。

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