アキラさんも「臨時休校になって、社会から必要とされていると感じた3月でした。たくさんの保護者に感謝もされました。医療従事者に特別手当が出るのは当然のことだと思いますが、こっちも支援してほしいというのが本音です」と吐露する。
M市では、コロナ感染拡大とは別の「緊急事態」が発生していた。
3月末日付けで指導員13人が雇い止めになったのである。うち、9人は10年以上の経験を持つ中核人材だ。さらに3人は、都道府県単位で実施される「放課後児童支援員」の資格研修の講師を務めてきた。次世代の人材養成を託されるベテラン指導員である。
M市では、2019年度より運営形態が公設公営から公設民営に移行していた。
「昨年度は、委託された企業からあれもダメ、これもダメと制限がかかり、これまでと同じようには行事や保育が行えなくなっていました。不満は感じていましたが、信頼できる指導員さんたちがいたので、不安は全くありませんでした」と、3年生の子どもを通わせる保護者は言う。上の子も学童に通わせていたため、通算5年間、指導員の仕事を間近に見てきた。子ども1人ひとりに寄り添う手厚い保育だった。
子どもも「学童ぎらい」に
しかし、信頼する指導員はいなくなり、4月1日から新しい指導員がやってきた。コストや効率を重視する会社が、意に沿わないベテラン指導員を切り捨てたのだと感じた。引き継ぎがほとんどされないまま配置され、指導員同士が初顔あわせだった。
子どもの顔は知らない。子どもの特性はもちろん知らない。学校内の施設のことも知らない。指導員に余裕がないため、ケンカをしていてもその原因さえ把握できていない。子どもたちは頭ごなしに叱られる。
「全く雰囲気が変わってしまい、あんなに学童が好きだった子が行きたがらなくなりました。臨時休校以来、いつもと違う状況のなかでも、安心して仕事に行けたのは学童があったから。でも4月になって、子どもが毎朝、『行きたくない』『3月に戻ってほしい』と言うようになりました。仕事は休めないので、なだめすかして行かせています。3月までの指導員が、どれほどのスキルと知識をもって保育してくれていたのかと改めて感じています。誰にでもできる仕事ではないことを会社はわかっていません。市のパンフレットには『安心・安全』と書かれていますが、子どもが行きたくない場所を安心・安全と言えるのでしょうか」と、保護者は憤る。
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