「3月12日から現地校は全校休校になり、一日中ホストファミリーの家にいる状態でした。学校は首都ダブリンからはだいぶ離れているし、アイルランド全体での感染者も少ないため、それほど緊張感はありませんでした。帰国後も現地校と連絡はとれていて、課題の提出などを続けています」(エミリさん)
日本での在籍校、神田女学園の担任とも連絡が取れており、日本の学校の休校解除がアイルランドに戻る前に行われる場合はその間、日本のクラスへの登校も受け入れてもらえると言う。
「はやくアイルランドに戻りたいです。夏休みが明ける8月には戻れたらいいなと思います」(エミリさん)。
同校の宗像諭校長は「ニュージーランドやカナダなど、3カ月の短期留学から1年以上の留学まで、多くの生徒を送り出しています。国により対応が異なり、アメリカは早い段階で留学生の帰国が決まりました。カナダはエリアによって緩やかなところがあり、現地に残っている生徒もいます。
3カ月の短期留学者の多かったニュージーランドは、滞在は認められていましたが、ロックダウンで学校に通えない状態になったため、現地滞在2カ月半で帰国させることにしました。
半年や1年以上の予定で出発していた生徒については、滞在2カ月で終わるのはあまりにもかわいそうなので、『留学の中断』という形で帰国させましたから、現地校がオンライン授業を開始している場合は、帰国後も授業を継続して受けられています。コロナが収まったら再びあちらで本来滞在予定だった残りの期間を過ごせるように調整を進めているところです」
留学事情には「カラクリ」も
留学の記録や単位認定がどうなるかまったく未定の陽菜さんの場合とはだいぶ違う。こうした対応の違いはなぜ生まれるのか。
「本校の場合も間にエージェントは入っていますが、派遣先となる現地校について、本校のほうで厳しく審査させていただいています。学校によってはエージェントに丸投げというところもあると聞いています。この違いが大きいのではないでしょうか」(宗像校長)。
例えば、姉妹校提携を結んだ学校の場合、平時から学校同士の交流があるため、今回のような緊急事態が起きたときでも、双方でコンタクトを取り合いながら対処を考えることができるという。
また、生活の受け入れ先となるホストファミリーにも違いが出ると話す。
「姉妹提携校の場合、基本的には同じ学校に通うお子さんのご家庭にホームステイします。家族の一員として受け入れてくれますから、日本帰国時も“戻ってくるんだよ”と声をかけてくれたりします。一方、エージェントに丸投げで行く留学では、留学生の受け入れをビジネスとしている家庭への滞在ケースも多いと聞きます」
こうした緊急事態が発生した場合、ホスト側は簡単に受け入れをやめたいと言い出すこともあるようだ。平時ならば次のホストも見つけやすいだろうが、今はかなり難しいだろう。
十分なフォローなく打ち切りとなるケースの背景には、こうした事情がある。今後留学を検討している人は、一口に留学といっても中身はまちまちで、こうした「カラクリ」もあることは、知っておいたほうがいいかもしれない。
文部科学省の担当者は「国内の学校には留学中だった生徒については柔軟に対応をしてほしいと連絡をしていますが、現地校については残念ながらこちらからは何も言えません。エージェントには生徒に不利益とならぬよう、対応してもらいたいです」と語る。希望を抱いて留学した子どもたちの将来のために、悪質なケースについてはぜひ国としてしっかり対処してほしい。
陽菜さんのようなケースは氷山の一角なのか。今後、問題はますます表面化していきそうだ。
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