果たして留学の記録や単位認定はどうなるのか。娘の陽菜さんは帰国前、アメリカで通う学校に書類の件について確かめようとしたが、電話はすでにまったく通じなかった。ホストファミリーに状況を説明し、手続きが必要な場合の協力をお願いして帰国するのがやっとだったという。
通常、アメリカのスクールイヤーの終了は6月。3月末で帰国した陽菜さんは3カ月分の学びが足りないことになる。学校がすべての授業を停止しているのならば単位認定もありうるが、この学校の場合、オンライン講座で学期を続けている状態。つまり、帰国して在籍者ではなくなった人だけが、学年の途中で学びを止めたことになる。
「高校2年生での留学は、日本の高2の学びができていないため、一般入試は不利となります。だから留学を決めた時点で、AO入試やグローバル入試といった留学経験を生かした入試で行こうと考えていました。それが受けられなくなる可能性があるんです」(涼子さん)。
志望校選びで目にしてきた大学の募集要項には「1年以上の留学経験者」と書かれているものもあり、もし、1年留学したという証明が降りなければ、こうした大学への受験資格を失ってしまう。
留学手配を請け負った会社から送られてきた手紙には、留学費用の返還はないということに加え、現地での成績証明に関しても責任は負えませんという類の文言があった。
「エージェントとしては今回の留学を終わったことにしたいようです。現地の学校が開く9月まで証明が出るかもわからず、大学受験の準備をしながら個人で現地とのやりとりも続けるなんて、とてもじゃないけれど現実的ではないと思います。エージェントや派遣した日本の在籍校には、心ある対応をお願いしたいです」
涼子さんは、同じエージェントを通して、日本の公立校から留学していた同級生たちのことも心配している。
「娘の場合は幸い、在籍する日本の学校が事態を考慮し、現地での証明が出る前の段階でも高3への進級を認めてくれました。しかし、公立校ではもともと留学中の単位を認めてもらえないため、留年覚悟で渡米していると聞いています。彼女たちはどうなるのか、2年留年になってしまうのか、うち以上に大変な状況だと思います」
取材後、陽菜さん家族は成績証明発行について、エージェントに協力してもらえるよう、交渉を始めたが、まだ解決の目途はたっていない。
日本の学校が責任をもって関わるケースも
一方で、同じような状況でも不安なく過ごせている留学生たちもいる。例えば、日本と海外の高校、2つの学校の卒業資格が得られるダブルディプロマ制度を昨年から始めた東京都の私立神田女学園。不運にもその1期生がコロナ禍に巻き込まれる状況となったが、その対応は陽菜さんのケースとは大きく異なるようだ。
1期生としてアイルランドの名門ロックウェル・カレッジに留学中だった高校2年生の藤田エミリさん(仮名)は4月6日に成田へ帰国し、現在は日本の自宅で過ごしている。
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