「コロナワクチン」日本が圧倒的に出遅れる事情 国家が民間に丸投げしたツケ、海外頼みの悲哀

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ワクチン研究の歴史が長い北里大学は、ワクチンよりも治療薬の開発を優先している。北里生命科学研究所感染制御研究センターの花木秀明センター長は理由をこう明かす。

「ワクチン開発には時間がかかる。北里はワクチンのことを知っているからこその判断。まずは治療薬を開発し、時間的余裕ができたうえで、第2段階がワクチンになる」

そもそもこの非常事態の中、既存のワクチンの生産を止めるわけにもいかない。余裕のないなかで、新たなワクチンの開発に着手するのは難しい。産業ビジョンで描かれていた「スパイラル発展」どころか、悪循環に陥っているのが日本のワクチン産業の現状だ。

国内支援の2倍以上の資金を海外のワクチン開発へ拠出

「国際社会とともにワクチンの開発を急いでいます」

3月28日、安倍晋三首相は記者会見でこう発言した。ワクチンの国際団体である「感染症流行対策イノベーション連合」(CEPI)や、「Gaviアライアンス」の名前を挙げ、協力していく方針を示したのだ。新型コロナウイルスの治療薬として注目される「アビガン」(富士フイルム富山化学が開発した抗インフルエンザウイルス薬)とは対照的に、安倍首相の一連の発言からは日本発ワクチンの期待感はあまり伺えない。

それは、国の予算付けでも浮き彫りになっている。4月7日に閣議決定された2020年度補正予算案では、「国内のワクチン開発の支援」は100億円。一方、「国際的なワクチンの研究開発等」には216億円だ。この国際的な研究開発とは、安倍首相も触れた国際団体への拠出を意味する。国内支援の2倍以上の資金を海外のワクチン開発に差し出すことになる。

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日本は2009年流行の新型インフルエンザウイルスで、ワクチンを海外に頼らざるをえなかったという過去がある。本来なら、自前でワクチンを用意するのが先進国としての責任だ。それに、新型コロナウイルスで世界規模のパンデミックを迎える中、仮に海外でワクチンが開発できたとしても、日本にそれがいつ届くのかはわからない。

産業ビジョンでは、感染症防御は「国家の果たすべき役割」と明記し、危機管理の観点からも日本でワクチンを開発・生産する重要性を説いていた。だが、業界に丸投げしたつけが、いま回ってきている。

長谷川 友恵 医薬経済社 記者

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はせがわ ともえ / Tomoe Hasegawa

2013年に医薬経済社に入社。製薬企業、がんなどを取材。

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