たばこ業界は世界的大型再編は一巡、規制強化で環境厳しい《スタンダード&プアーズの業界展望》
天野待知子
先進国を中心に喫煙規制が強化される中、1990年代後半以降、合併や買収が相次いだ世界のたばこ業界の大型再編は2008年で一巡した。今後は葉タバコ供給会社を傘下に収める動きや、新興国の国営たばこ会社の民営化を軸とした競争が中心となるだろう。
スタンダード&プアーズが世界の主要たばこ関連メーカーに付与している格付けは「BBB-」から「A+」に分布しており、「BBB」水準が最も多い。格付けには、規制の度合い、市場シェアや収益性、訴訟リスク、株主還元策、グループの財務方針や財務内容を反映しているが、たばこ製造販売業には以下のような共通する特性があるとスタンダード&プアーズは考えている。
・喫煙者にとって必需性が高いため、食品・飲料に比べると小売価格の変動に対する販売数量の弾力性は低く、小売価格引き上げや景気悪化の影響を比較的受けにくい
・規制業種であるため新規参入が困難である半面、グローバル企業間の競争が厳しい
・先進国では喫煙人口の減少、たばこ税の引き上げや規制強化のため、事業展開が困難である
・市場拡大中の発展途上国では圧倒的な先行者利益が存在する
・たばこの製造原理は比較的単純で画期的技術革新がないため、大規模設備投資は不要である