たばこ業界は世界的大型再編は一巡、規制強化で環境厳しい《スタンダード&プアーズの業界展望》

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JTは海外たばこ事業に活路

JTの09年4~9 月期の連結税込み売上高は前年同期比13%減、償却前営業利益は同19%減となったが、EBITDA マージン(税抜き売上高に対する償却前営業利益の比率)は22%と、ここ数年間の23%程度から大きな変化はなく、食品セクターとしては高水準を維持した。国内たばこ事業はシェア65%と引き続き圧倒的な市場地位を維持している。一方、高齢化の進行や健康懸念の高まりを受けた喫煙人口の減少、規制強化の流れ、たばこ税の引き上げなどにより、国内たばこ市場は縮小しており、事業環境見通しは厳しい。仮に政府が大幅な増税に踏み切った場合には、販売数量の急減につながる懸念がある。食品・医薬など非たばこ事業の利益貢献は今後数年、限定的にとどまる見通しであることから、中長期的にグループ収益力を維持していくうえでは、コスト削減に加えて海外たばこ事業の収益の伸びがカギとなる。

海外たばこ事業では、英ギャラハーの買収によって製品構成を拡充した。足元では景気悪化や増税のマイナス影響を受け、ロシアをはじめとするCIS やイランなどで販売数量の減少が続いているが、海外たばこ事業全体のキャッシュフローは当面、堅調に推移するとみられる。ただし、同4~9月期の海外たばこ事業は、海外子会社の決算を連結する際の為替換算で、主要市場の現地通貨(ルーブルやユーロなど)が米ドルに対して下落し、さらに米ドルが円に対し大幅に下落したことから、米ドルベース、円ベースのいずれも2けたの減収減益となった。 地理的分散の効果を十分に引き出して、複数の通貨の為替変動による影響を中長期的に抑制していくための施策が必要だろう。

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