テスラの株価が"コロナ後"も快走を続ける理由 ウィズコロナ・ポストコロナの米国企業(1)

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一方のテスラは、イーロン・マスクCEOを含め、何かと話題が多く、注目度の高い企業だ。いわずと知れた電気自動車(EV)のベンチャーで、すでに高級セダンタイプのモデルS、クロスオーバーのモデルX、そして現在の主力であるモデル3を展開している。モデル3はようやく量産体制が整い、2019年の生産台数は30万台超と前年比倍増となった。

この1月からはコンパクトSUVのモデルYの生産が始まり、3月にデリバリーがスタートした。同社の販売台数は昨年来、モデルSとモデルXは大幅に減少しているが、それを上回るモデル3の増加とモデルYの追加により、2020年1~3月期は前年同期比40%の大幅な増加となった。

量産体制が整ったとはいえ、モデル3は現在も注文から納車までかなりの時間を要する。アメリカ版のホームページで検索すると、申し込んでから納車までの予想期間が7~11週間と表示されている。

いま申し込んだとして、納車されるのは6月末から7月中となる計算だ。逆算すると、この1~3月期の販売台数というのは、昨年秋から年末にかけてのオーダー分が納入されたものということになる。

テスラ車は完全なEVで、自動運転のシステムを装備している。将来的に利用可能となる完全自動運転のハードウエアも搭載されており、ソフトウエアのアップデートを通じて機能が進化していく仕組みだ。

そのため、ユーザーは環境問題などに敏感な層や、先進技術などに関心の高い層が中心だと考えられる。もちろん、モデル3の最低価格グレードでも3万9990ドル(日本では521万円)と、決して安くはない。

テスラも全米各州で店舗展開を行っているため、当然、新型コロナによる移動や営業の制限による影響は避けられない。ただネットでの注文が主流で、スペックやカラー、オプションなどを設定して簡単に申し込むことができるため、他社より影響は少ないかもしれない。

クルマというより"芸術品"

実は、ニューヨーク株式市場に上場している自動車メーカーで、テスラと似た動きを示している企業がある。イタリアの有名な高級スポーツカーメーカーのフェラーリ(RACE)だ。3月中旬までS&P500とほぼ同じ動きを見せていたが、同月下旬以降、一歩先んじて上昇に転じた。

まさに高級スポーツカーの代名詞ともいえるクルマで、各モデルの正式な価格は確認できていないが、1台20万~30万ドル、日本では3000万~4000万円程度と推測される。納期も1年以上待つケースもあるようで、ユーザーにとっては、クルマよりは芸術品のほうが近いかもしれない。

販売台数は、2018年が10.1%、2019年が9.5%と好調を維持している。新型コロナの影響でイタリアの製造拠点は3月14日から5月3日までの予定で操業を停止しており、5月初旬に公表予定の2020年1~3月期の販売実績が気になるところだが、大きな影響はないとみられる。

GM・フォードと、テスラ・フェラーリの株価の動きの違い。それは中間層を含めた広いユーザー層がターゲットとなるか、テスラのように製品の特性を支持する限定的な顧客層や、フェラーリのような極めて限られた富裕層がターゲットか、による業績への影響度の違いによるものだ。

特に後者のような層は、景気動向や社会の変化に対しても大きく影響されることはない。今回の新型コロナの混乱相場であっても、株価はそうした傾向を映し出したということだろう。

加藤 千明 ファイナンシャル・プランナー、「アメリカ企業リサーチラボ」運営

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かとう ちあき / Chiaki Kato

大手証券会社勤務の後、1993年7月、東洋経済新報社に入社。主に統計指標をベースとした刊行物を担当する一方、電機・化学業界担当記者としてITバブルの全盛期と終焉を経験。その後は、マクロ、マーケットおよび地域動向を主戦場に、データをもとにした分析、執筆などを行う。2005年より『東洋経済 統計月報』編集長、2010年より『都市データパック』編集長。『米国会社四季報』編集部を経て、2021年2月に退社。現在はファイナンシャル・プランナーとして活動するかたわら、アメリカ企業の決算情報を中心にSNSで発信。

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