科学が示す「コロナ長期化」という確実な将来 3つの変数でわかる私たちがとるべき対策

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新型コロナウイルス検査への取り組み方は各国で異なる(写真:ロイター/Toby Melville)

さて、以上が感染症疫学の数理モデルの基本だ。これによって、どんな感染の推移を予想できるだろうか。

よみがえる基本再生産数

1つには、第2波、第3波の到来は不可避であり、長期化は免れないということだ。先述のように接触削減などの対策により、実効再生産数を基本再生産数(以下、新型コロナは2.5と想定)より引き下げることはできる。

実際、最近のヨーロッパやアメリカでは、ロックダウン(都市封鎖)の効果で新規感染者数が減少してきた。これは数理モデル上、実効再生産数が1未満になったことを示唆する。

長引く封鎖は経済や市民の生活・メンタルに大打撃を与えるため、欧米諸国の政府は、対策を緩和する方向を打ち出している。では、実際に対策を緩和するとどうなるか。人工的に低下させてきた実効再生産数は再び、基本再生産数の2.5に向けて上昇するのは確実である。

欧米に遅れる形で日本でも4月7日、東京など7都府県を対象に政府が緊急事態宣言を発令し、その後対象を全国に広げた。足下で新規感染者が着実に減少していくかはまだ予断を許さないが、仮にそうなったとしても、ゴールデンウィーク後に外出や休業の自粛要請をやめれば、再び感染拡大に戻ることは必至だ。

波状的に感染拡大が起こることは、過去のパンデミック(世界的流行)でもあった。1918年に流行が始まったスペインインフルエンザでは、ウイルスの変異による重症化もあり、第2波や第3波の被害のほうが大きかった。同じことは新型コロナでも起こりうると考えたほうがよいだろう。

それでは、結局、集団免疫率に達するまで感染は止まらないのであれば、接触削減などの対策を行うことは無駄であり、経済などへの打撃を考えれば、やめたほうがよいのだろうか。そう考えるのは短絡的だ。理由を見ていこう。

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