三つ目に聞いた「その他、放送業界と関係ないことでも構わないので今回のコロナ禍について思うところがあればお書きください」の質問は漠然としすぎだと送信後に反省していたのだが、意外にも多くの回答が寄せられた。放送業界の「中の人」たちが、今回の異常事態を機に深く考えていることがよくわかる。
まずコロナについての情報の伝え方をめぐる、あらためての思い。「(行政の)透明性の低さは放送業界を含めたマスコミの責任でもある」「パンデミックではなく、“インフォデミック”に加担した責任があるかどうかは検証すべきだし、今の情報番組のつくり方は見直される必要がある」といった反省が表明された。
一方、「国全体が一つの方向に突っ走ってしまいそうなときにこそ、“ジャーナリスティックな視点”を大切にしなければならない」「現在の社会の空気を敏感に感じとった適切な演出のもと、政治権力の監視チェックはもちろん、有益な情報を発信しつづける責務がある」といったメディアの使命感をあらためて噛みしめた回答もあった。
また「人が集うことの喜びや大切さが逆にクローズアップされる。それをいい形で提供・場づくりできる(リアルでもバーチャルでも)サービスや取り組みが生み出されれば」との回答は、コロナの時代のテレビの新たな役割として注目したい。
意思決定を若い世代に譲るときがきた
さらに放送を離れて今後の社会のあり方について書いた回答もあった。「人・モノ・金・情報が首都に一極集中している弊害が、今回の新型コロナウイルスの流行で改めて浮き彫りになった。日本国内で資源や権限を分散しないと国としてあまりに脆弱」「普段の生活で無駄なことが多かったことが結構露呈し、日本がリセットされるような印象」「気持ち戦後復興と同様にして、目の前でなく未来につながる社会造りを始める気概を持つ」など新しい社会を構想する回答もあった。
「社会を今の経済至上主義から、人々の幸福至上主義に変えていかねば」とまで書いた人もいて、至言と感じた。そのためにも「社会変容を加速するチャンス。意思決定を若い世代に任せるべき。」という考え方は重要だ。
さてこうした回答を一通り見てもらうと、放送業界という特殊な業界の人々の意見ながら、みなさんにも少しずつ共通項が見いだせたのではないだろうか。まず自らの業務の足元の変化を直視し、この環境で何ができるか、どう変えるべきかを考える。そして今後の業界のため社会のためには、もはや自分の立ち位置を守ることより前に進めることが重要だと認識する。
多くの人が、同じように感じているはずだ。コロナ禍は世界中で変わるべき方向へ時計を進めている。放送業界は広告収入がベースの、経済至上主義の権化のような産業だ。だが経済とは関係なく、今テレビというコミュニケーションシステムは重要な社会装置として機能している。皆さんの回答にあったような反省点もありつつ、社会の中でミッションがあるのではないか。
広告収入の減少で規模が縮小するのは免れないにしても、社会の中で必要だとしたら、どのようなエコシステムで“回せる”のか。今後の議論が重要だと思う。貴重なアンケートに回答してくれた皆さんに感謝する。反省として、ケーブルテレビ局は地上波局とビジネスモデルが違うので、せっかくの回答が埋もれてしまった。次の機会に、ケーブルテレビ局に絞ったアンケートをやろうと考えている。
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