パナソニック、車載電池で「トヨタ頼み」の事情 中国勢の追い上げ受け、赤字事業に見切り

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さらに次世代電池の全固体電池の開発も急務だ。全固体電池はリチウムイオン電池よりも燃えにくく、安全で、急速充電性も高いとされ、EV向けの蓄電池として実用化が期待されている。PPESは2020年代前半にも全固体電池を商品化する目標で、技術面で世界をリードすることを狙う。

パナソニックとトヨタは車載電池以外でも関係を深めている。2020年1月にはパナソニックホームズとトヨタホームをはじめとした両社の住宅事業を統括し、自動運転車や高規格通信網を導入した街づくりを目指す「プライムライフテクノロジーズ」社を設立した。パナソニックとトヨタの同社への出資比率は同率であり(両者のほか三井物産も出資、出資比率は非公開)、パナソニック出身の北野亮氏が社長に就任した。

パナソニックは、家や暮らしを中心に付加価値を提供する「くらしアップデート」を新しい成長事業分野としており、プライムライフ社で強みを発揮したい構えだ。

薄れるテスラとの関係

一方、パナソニックにとってトヨタと並ぶ車載電池の大口顧客であるテスラには、トヨタ向けと異なる「丸形電池」を供給し続ける。テスラと共同運営するアメリカのEV向け車載電池工場「ギガファクトリー」にパナソニックはこれまでに約2000億円の資金を投じてきた。車載事業を高成長事業に位置づけていた当時の中核工場であり、テスラ向け供給を独占することによってテスラとの蜜月関係を築いてきた。

2020年2月の決算会見でパナソニックの梅田博和CFOは、赤字続きのギガファクトリーが2019年10~12月期に四半期として初めて黒字化したと説明した。テスラの新型EV「モデル3」の生産が軌道に乗り、それに伴ってパナソニックの丸形車載電池の量産効果も出たためだ。

だが、テスラは2020年、中国で現地生産するEVの電池はCATLから調達すると決めた。パナソニックとしては、テスラ向けアメリカ事業の投資回収がようやく始まった矢先に、中国へ巨額投資するのは厳しい。そこにCATLが存在感を見せつけた格好で、パナソニックの独占供給が崩れることになった。

2月下旬には、太陽電池のテスラとの共同生産を解消すると発表。同事業も赤字続きで、2017年の生産開始からわずか3年での撤退となった。

パナソニックの梅田CFOは「今後当社以外の車載電池をどのように使っていくかはテスラが決めることであり当社からは何も言えない」とした上で、「テスラ車の車載電池は100%当社が供給してきており、(テスラからの)要求には十分に応えられる。ギガファクトリーでの生産が拡大していくなか、そこに集中していく。中国の動きは気にしていない」と述べた。

新型コロナウイルスが拡大し、世界の自動車市場が低迷するなど車載市場も先行きは明るくない。パナソニックのテスラ向け車載電池も感染拡大で生産が一時停止した。トヨタとの関係を強める一方、テスラとの関係は不透明で、パナソニックの車載電池事業は今まさに岐路に立っている。

劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。1994年台湾台北市生まれ、客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説を研究している。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、映画・アニメが好き。

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