パナソニック、車載電池で「トヨタ頼み」の事情 中国勢の追い上げ受け、赤字事業に見切り
しかし、シェアほどに収益は伴わない。中国勢の急伸で車載電池の価格競争に巻き込まれ、2019年3月期の車載事業は121億円の営業赤字。成長エンジンどころか足を引っ張っている状態だ。2019年5月に発表した2022年3月期までの新中期戦略で、車載事業を高成長事業から「再挑戦事業」に格下げした。2020年3月期も第3四半期(2019年4~12月)まで累計292億円の営業赤字を計上している。
特にパナソニックを苦しめてきたのが中国最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)だ。創業は2011年と比較的新しいが、中国のEV市場拡大や政府からの補助金を活用して急成長。BMWなどドイツ車への供給やホンダとの共同開発も手がけるようになり、パナソニックとほぼ同等の約2割の世界シェアを占めるなど勢いづいている。
中国勢と単独で対抗する限界
2018年前後から中国政府による電池向けの補助金は減少傾向にあるが、事業が軌道に乗ったことで、CATLは大規模投資を連発。2020年2月末には260億元(約4000億円)を投じて4つの生産拠点の増強や新設を行うと発表した。こうした動きを背景に、トヨタはパナソニックからの電池供給に必ずしもこだわらなくなっている。
トヨタは2019年7月、CATLと世界3位の中国大手BYDと相次いで提携した。巨額投資を続ける中国勢にもはやパナソニック単独で対抗するのは難しいのが現状だ。
「赤字事業を切り離してトヨタにあげた」。今回のトヨタとの合弁会社について、パナソニック関係者はこう口をそろえる。トヨタと車載電池で正式に合弁会社の設立で合意したのは2019年1月。だが、トヨタと協業検討で合意したのはCATLの勢いが顕著になった2017年12月で、パナソニックとしても単独での成長投資に見切りをつけていたようだ。
一方、トヨタにとっては、EVをはじめとする電動車にとって最大の弱点である車載電池の安定的な調達とコスト削減が課題になっていた。地球温暖化対策としてガソリン車の販売や排ガスへの規制が強まっており、EVやHVへの需要は根強い。
トヨタは電動車の販売台数を2018年実績の163万台から2025年に550万台以上にする目標を掲げている。赤字続きとはいえ、世界トップクラスの規模と技術を持つパナソニックの電池事業の主導権を握ることで、電動車向け電池をトヨタグループ内で安定調達するメドをつけたといえる。
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