京都は「気楽に入れる店がない」残念な外食事情 昔ながらの「ぼったくり商法」もう見直す時期

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河原町通の四条近くにあるショッピングセンターOPAの裏には、常に行列のできている人気レストランがある。「サラダの店」と謳っている「サンチョ」である。長い行列を見るたびに、皆さんサラダにそれほど飢えているのだろうかと疑問に感じていた。

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ある日、開店前に並んで、ステーキの定食を味わってみた。カウンターのみの店で、目の前の狭苦しい厨房で、店主以下スタッフが手を休ませる暇なく、カツを揚げ、ステーキやハンバーグを焼き、そこにさっと大量のキャベツ主体の野菜を盛っていく手際が、ほれぼれするほど見事であった。

決して盛りの綺麗な皿が提供されるわけではないが、野菜は普通の盛りでも他店の2〜3倍サイズ、牛肉も高級ではないが、処理がいいのか旨み十分、内容にしては廉価で、人気の理由に納得である。おそらくネットの書き込みによって、観光客もたくさん流入しているのだろう。

観光客と地元民が望む「飲食店」とは

フェイスブックでステーキ定食の写真を添えてアップしたところ、京都生まれ京都育ちの知り合いから、「高校生のときによく通いました。懐かしいです」とコメントが届いた。この方が高校生のときというのは、たぶん25年は前のことである。それが今でもこの人気を保っていることに、他の繁盛していない店は注目するべきだろう。

店内のキャパシティが小さいので、一人ひとりにこれだけの手間をかけて調理すれば、当然、表では行列ができてしまうというわけだ。こういう食事を、観光客のみならず地元の人間も求めているのだ。昔ながらの一種「ぼったくり」の京都商法は、見直さないと客はどんどん逃げていく。地付きの商売人たちは、さらに痛い目に遭わないと気がつかないのだろうか。

校條 剛 文芸評論家

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めんじょう つよし / Tsuyoshi Menjo

1950年、東京都荻窪生まれ。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。1973年、新潮社に入社。「小説新潮」編集長、「新潮
新書」編集委員などを経て、2010年に退職。2014年から2019年まで京都造形芸術大学文芸表現学科教授。2019年より京都文学賞選考委員。日本文藝家協会会員。2007年、『ぬけられますか―私漫画家滝田ゆう』(河出書房新社)で大衆文学研究賞を受賞。他の著作に、『ザ・流行作家』(講談
社)、『作家という病』(講談社現代新書)などがある。

 

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