ブランド化する「イチゴ」知られざる開発の裏側 どんどん大きく、甘くなっている理由とは

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「栃木県の生産者がイチゴ栽培を始めた水田の土壌は、肥料の持ちも保水力も高い。また冬場の日照量が多く、鬼怒川などの清流や地下水の豊富な土地柄で、大消費地の首都圏が近い。そして、栃木県の生産者は勤勉さで技術力が高く、地域のまとまりが強い」と植木所長は語る。

栃木県にある「いちご研究所」(筆者撮影)

いちご研究所がつかんでいる近年の市場動向を聞くと、「酸味を嫌い、甘みを好む傾向が強いです。ですから、私たちも甘みを際立たせた、大きくて甘いものを開発しています。他県の出している品種にも、そういう傾向があります。ただ、酸味があったほうが、味が濃厚になる。とちおとめには、そうした甘さと酸っぱさのバランスの良さがあります」と言う。

アジアで存在感を増す「あまおう」

栃木県の開発力の背景には、こうした丹念な調査と、長年に渡る技術力の裏付けがある。そうした蓄積のもとに、私たちは大きく甘くなった、さまざまな品種のイチゴを楽しむことができるようになった。近年改めてイチゴ人気が高まっているのは、そうした魅力ある品種が次々と出ているからなのだ。

もう1つ気になるのは、アジアでのあまおう人気など、輸出農産物におけるイチゴの存在感である。

近年、国は農林水産品の輸出に力を入れており、イチゴもその主力商品の1つ。政府は3月6日に、農林水産品の輸出額を2025年に2兆円、2030年に5兆円に増やす長期目標を決めている。

野菜・果実の中で、イチゴはリンゴ、ブドウに次ぐ3位の輸出額で、2018年には25.3憶円に上っている。2012年には1.8憶円に過ぎなかったことを考えれば、その伸びはめざましい。主要輸出先は、1位が香港で2018年に19.5憶円で突出しており、台湾、シンガポール、タイ、マカオが続く。

政府がイチゴをはじめとする農林水産物の輸出に力を入れるのは、少子高齢化で国内市場の縮小が見込まれていることに加え、アジアを中心に新興国で経済成長と人口増加が進んでいるからだ。

現在は東アジアを中心に富裕層向けのイチゴを輸出しているが、今後は拡大する中間層や、東南アジアその他に向けた輸出にも力を入れる。イチゴにダメージを与えにくく鮮度を保持する包装資材が開発されており、船で運ぶようになれば高級イチゴ以外の出荷も増やせる。

農林水産物と食品の輸出額は、順調に増加してきた。しかし、日韓関係が悪化したことや、香港でデモが過熱したことで、2019年は前年比0.6%増とほとんど伸びていない。しかも、3月以降新型コロナウイルスが世界を揺るがす事態になっていて、リーマンショックと比較されるほど世界経済が冷え込み、輸出の先行きは不透明になっている。

長年の研究者たちの開発努力、生産者たちの努力のたまものである、魅力的なイチゴが、日本の消費者はもちろん、世界の消費者たちのもとに届け続けられることを願っている。

阿古 真理 作家・生活史研究家

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あこ まり / Mari Aco

1968年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部卒業。女性の生き方や家族、食、暮らしをテーマに、ルポを執筆。著書に『『平成・令和 食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)』『日本外食全史』(亜紀書房)『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた』(幻冬舎)など。

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