ブランド化する「イチゴ」知られざる開発の裏側 どんどん大きく、甘くなっている理由とは
栃木県の大粒で甘い「スカイベリー」、佐賀県の白くて大きい「天使の実」、千葉県の濃紅色の「真紅の美鈴」、岐阜県の特大の「美人姫」……。冬から春にかけて、スーパーや飲食店などで数多くの「ブランドイチゴ」を見かけるようになった。
総務省の家計調査では、日本人のイチゴの購入量はこの20年間で7割ほどになっている。一方、スイーツなどに使われる加工用や贈答用は伸びているとみられており、各県ともブランドイチゴの開発に力を入れている。中でも“イチゴ戦争”に並々ならぬ力を入れているのが、「とちおとめ」を開発した栃木県と、人気品種「あまおう」を擁する福岡県である。今回はこの2県を軸に、開発競争の最前線に迫りたい。
1、2位を争う栃木と福岡
その前に、両県の“実力”を比べてみよう。栃木県は、1968年に全国1位のイチゴ収穫量となって以来、その座を守り続けている。2018年の収穫量は2万4900トンと圧倒的首位。また、総務省の家計調査によると、宇都宮市の消費金額は2016年と2017年に4位、2018年は6位と上位につけている。
一方、福岡県は、2018年の収穫量は1万6300トンと茨城県には大きく差をあけられているものの、全国2位につけている。また、輸出にも力を入れており、2003年から香港、その後台湾、シンガポールなどと輸出先を広げ、あまおうはアジアでも人気の品種になっている。もっとも、消費額は2016年に44位、2017年に31位、2018年に37位と、食べるほうではかなり順位が低い。
この2県で先に人気ブランドの開発に取り組んだのは福岡県で、1983年にさかのぼる。それまでの品種と比べて美味しく、香りが豊かという特徴を持った「とよのか」を開発した。これに続くように、栃木県が2年後に「女峰」を売り出した。
この品種には、それまでは年明け以降だったイチゴの出荷時期をクリスマス前にできる強みがあった。女峰は、12月から店頭にイチゴが並ぶ光景を作り出した、画期的な品種だったのだ。
さらに栃木はそこから約10年後、1996年に満を持してとちおとめを導入。通常、都道府県は開発した品種を品種登録の有効期限である25年間(2005年以降)、自都道府県のみで栽培ができる。が、女峰もとちおとめもすぐに他県で栽培できるようにしたことが奏功し、日本一の生産量を誇る品種となったわけである。
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