マツダの業績はコロナショック以前から厳しい。コロナの影響を織り込んでいない2月の時点で、マツダは2020年3月期の営業利益を600億円(前期比27%減)と見込む。米中などでの販売が苦戦し、販売台数計画は前期比3.9%減の150万台。過去最高だった2018年3月期の163万台からは13万台も減ることになる。
販売減に加えて、次世代車の研究開発費やトヨタ自動車とのアメリカでの合弁工場立ち上げ、現地の販売網強化など成長に向けた投資が重たいことが、利益水準の低さにつながっている。丸本明社長は今年1月下旬に実施した東洋経済のインタビューで、2021年3月期についても「業績面ではまだ我慢の時期」との認識を示していた。マツダが昨年11月に発表した中期経営計画でも、2021年3月期までは「足場固めの時期」と位置づけ、2022年3月期から業績のU字回復を目指す方針だった。
今年度は赤字転落の可能性も
そこに新型コロナが襲う。2020年3月期の業績が下押しされる公算は極めて高いが、影響がはっきり出てくるのは4月から始まった2021年3月期だ。ブルームバーグ・インテリジェンスの吉田達生シニアアナリストの試算によると、マツダは280億円の営業赤字に陥る可能性が高いという。これは2021年3月期のマツダの世界販売が12%減少するとの前提で、2020年3月期からの営業利益押し下げ幅を試算したシミュレーションだ。
ただ、一部のアナリストからは世界の新車需要について「感染の収束時期次第では20%減もありうる」との見方も出始めており、その場合には赤字幅がさらに拡大しかねない。
マツダの内部留保比率(利益剰余金÷総資産)は20%(2019年12月時点)と、トヨタやホンダなど他の自動車メーカーが40%台であるのに対して見劣りする。財務基盤が決して盤石とはいえないマツダが何とか大型投資をこなしている最中に起きたコロナ危機。マツダ株の年初来騰落率(4月16日終値ベース)はマイナス40%に迫り、株式市場がマツダの今後を不安視していることが見て取れる。
マツダの中堅社員は「大型投資がかさむ時期にコロナが重なり、財務的に厳しくなるのは覚悟している。歯を食いしばってでも耐えるしかない」と沈痛な面持ちで話す。
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