「村八分」日本人が意外と知らない本当の意味 感染症の恐怖からうまれた「言い伝え」とは

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通夜や葬儀・告別式の後、「通夜ぶるまい」や「精進落とし」「精進上げ」と称される食事が振るまわれる地域が多いと思います。

こういった一連の葬送儀礼の中での食事については、喪家は口を出さず、隣近所にまかせるという方式をとっていた地域が多くあるのですが、これも得体の知れない疫病と無関係ではなさそうです。

家族は故人と生活を共にし、納棺・通夜などを通じて密接な関係にあります。その家のかまどを使い、今でいう「濃厚接触者」である家族が料理をすることは衛生的にNGだったのでしょう。

通常用いる火とは別の火を使用することを「別火(べっか)」といい、通夜ぶるまいや精進落とし等でふるまわれる料理は、他家で準備されるものでした。また喪家とは別のかまどで炊いた握り飯を持参するところもあったそうです。

村八分から「火事」と「葬式」が漏れた理由

村八分とは、村社会の秩序を維持するために行われた処分のことで、共同決定事項に違反したり、共同労働を行わなかったり、あるいは犯罪行為をはたらいて秩序を乱した場合など、その家に対して交際を絶つなど人付き合いが制限されました。

八分とは冠・婚・建築・病気・水害・旅行・出産・年忌の8種のことで、これらは制裁が加えられる対象となるわけですが、残りの2種である火事と葬儀は別とされていました。

火事は、村全体へ火が回ってしまったら自分たちの生命や財産が危うくなるから、葬儀は村人への疫病の伝染を防ぐため、やむをえずであっても助け合わなければいけないというものです。

家族は、臨終から通夜等を通じて故人の側にいるため、感染症が原因であれば「濃厚接触者」である状態です。自分たちで葬儀の準備等を行い家の外に出ることによって、感染が拡大してしまうことも考えられるでしょう。死体の処理ができず放置されてしまったら、さらに事態は悪化してしまいます。

若い男性は墓穴を掘り、女性は台所でまかない仕事などを分担します。こうして死穢(しえ)を遠ざけようとしていたのでしょう。

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