転勤シーズン、「春の引っ越し」に起きた大異変 働き方改革とコロナが中小引っ越し業者直撃

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引っ越し業界ではここ数年、大手事業者が地域密着の中小事業者からシェアを奪う構図が続いている。

働き方改革により、労働時間規制が強化され、これまで正規社員だけでなくアルバイトにも時間外労働を強いることで、1日当たりの稼働率を高めるというやり方を続けることが難しくなった。

労働基準監督署は取り締まりを強化し、その結果、事業者の稼働率が落ち込み、受注件数も減少した。グライドの大島氏は「認知度が高く、営業力のある大手事業者に中小の事業者は押されている。長時間労働による低価格でしか差別化できない事業者はこれから淘汰されるだろう」と指摘する。

小型営業所を中心に首都圏強化

さらなるシェアの獲得を狙い、サカイ引越センターは2019年11月から、首都圏を中心に営業所を次々と新設している。

需要の集中する首都圏で営業拠点を設置する場合、ハードルとなるのが拠点用の土地の取得だ。少しでも土地を確保しやすくするため、保有トラック台数が従来比で約半分の5台程度という小型拠点を展開している。これまでに埼玉県春日部市など、首都圏を中心に営業所10カ所を設置した。

2021年3月期についても「中小事業者の稼働時間の制限は続き、需給環境がさらに逼迫する」(真鍋氏)と見込む。拠点拡充にはなお積極的だ。

サカイは引っ越しの平均単価向上策も講じる。需給ひっ迫を理由に、2016年3月期に9万8882円だった平均単価は、2019年3月期には11万3506円にまで引き上げることができた。

現在はエアコンの設置や家具などの通信販売といった附帯サービスも強化しており、さらなる単価アップを狙っている。

佃 陸生 東洋経済 記者

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つくだ りくお / Rikuo Tsukuda

不動産業界担当。オフィスビル、マンションなどの住宅、商業施設、物流施設などを取材。REIT、再開発、CRE、データセンターにも関心。慶応義塾大学大学院法学研究科(政治学専攻)修了。2019年東洋経済新報社入社。過去に物流業界などを担当。

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