転勤シーズン、「春の引っ越し」に起きた大異変

働き方改革とコロナが中小引っ越し業者直撃

引っ越し事業者にもコロナ禍が及んでいる(記者撮影)

「例年3月になるとトラックがフル稼働するのに、今年は3月中旬になっても一向にシフトが埋まらなかった」

「3月に入ってから契約する、”駆け込み引っ越し”も例年と比べて少ない」

多くの企業で人事異動や転勤が行われる3~4月。通常であれば、年間の引っ越し件数の3割超が集中する繁忙期だというのに、新型コロナウイルスの影響で引っ越し関連ビジネスに「異変」が起きている。

引っ越しの問い合わせは激減

この時期は需給が逼迫して引っ越し単価も高止まりしやすいため、引っ越し業者にとっては稼ぎ時でもある。引っ越し一括見積りサイトを運営する「GLIDE」(グライド)の営業担当、大島広志氏は「(この時期の平均単価は)家族向けで10万~13万円、単身向けで4万~6万円ほど」と説明する。この金額は、繁忙期以外の時期と比べて3割ほど高い。

ところが2020年は状況が一変。大阪府内の中小引っ越し業者「YELL」(エール)は「3月は問い合わせの数が激減し、作業件数(受注件数)も前年同月比で2~3割ほど落ちた」と話す。

首都圏を中心とする中堅引っ越し業者「アップル引越センター」の文字放想(もんじゆきお)社長も、「新型コロナウイルスの影響で企業が人事異動を延期し、転勤が減ったこと、さらに賃貸物件の契約更新などに伴う引っ越しが見送られているようだ。体感だが、2月下旬から作業件数が(前年同期比で)3~4割ほど減った」とこぼす。

引っ越し業者に逆風が吹く中、気を吐いているのが引っ越し業界最大手「サカイ引越センター」だ。同社の2020年3月の売上高は前年同月比3.1%増の153億円と堅調だ。2020年3月期通期(速報値)でも売上高は前期比4.9%増の898億円、作業件数は同4.6%増の78万3680件となり、期初予想を上振れている。

2019年までは、繁忙期になるとドライバーの数など、同社の対応能力を超える案件が寄せられていた。新型コロナの影響で案件が減少した2020年3月は、むしろ受注が適正規模になり、ダメージはそこまで大きくなかった。同社の真鍋彰郭取締役は「期初時点で11万1744円と予想していた引っ越しの単価も2000円ほど上振れており、上出来だ」と語る。

コロナ影響が長期化すれば、引っ越し需要がさらに減退する懸念はある。アップル引越センターの文字社長は「2021年1月~2月まで需要が縮小してもおかしくない」と警戒感を強める。

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