和牛だけでなく豚などの家畜は飼料代が生産原価の大半を占める。このため、和牛の枝肉価格が下がり、肥育農家の収入が減れば、生産原価に占める飼料代の割合は相対的に大きくなる。このため計画していた頭数分の飼料代の確保が難しくなり、飼養頭数を削減せざるを得ない状況になる。
その結果、肥育農家の収入が減り、離農につながるおそれすらある。先の男性は「もし肥育農家を本当に保護したいのなら、毎日の飼料代の一部を直接支給する支援策を実施するべきだ。」と強調する。
現在、日本は乾草や稲藁といった粗飼料や穀物飼料のほとんどを北米、オーストラリアや中国などからの輸入に頼っている。
今回の新型コロナの感染拡大で景気が急速に悪化、各国がグローバル化から一転して、自国第一主義や保護主義の動きを強めることも予想される。
仮に日本への輸出が減らされれば、途端に日本国内の飼料価格は高騰し、畜産農家を営めないところまで追い込まれるのは当然懸念すべきシナリオだ。
実際、飼料メーカーの関係者によると、すでに北米からの海上輸送に遅れが生じていて、乾草の在庫に品薄感が出始め、単価が上昇し始めているという。
今後、北米における状況が悪化し、「アメリカファースト」の動きが一層強まれば、私たち消費者側も和牛という高級食品はおろか、豚や鶏など日常的に食べる食品も高騰し一気に生活を圧迫する事態になりかねない。
食料安全保障を考えるべきときではないか
日本の2018年度の食料自給率はカロリーベースで37%と、約6割を輸入に頼っている。しかも、畜産物の自給率は15%程度にすぎない。飼料を自給している割合が低く、国産肉であってもカロリーベースの自給率には算入されないためだ。
国産だけでまかなうには限界があり、そもそも日本では自給できない品目もある。これだけ日本が輸入に頼ることができるのは、恵まれた経済力を基礎としたこれまでの外交力の成果といっていいだろう。しかし、ウラを返せば、国際情勢が変われば一気に窮する脆さがあるということでもある。
新型コロナの世界的な感染拡大はいまだ終息が見通せない。このコロナショックをきっかけに日本の食料安全保障政策までも見直す必要に迫られる可能性があるのだ。
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