喫煙室でタバコ吸う人があまりに危なすぎる訳 「3密」の条件が当てはまり感染拡大が懸念

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この会社に限らないが、喫煙室は狭く、喫煙者が密集し、深く息を吐き出す、いわゆる「3密」の条件が形成されている。県では喫煙室での感染に注意を喚起し、企業内での感染が広がっていることを受け、社内に患者発生がなくても朝晩、体温検査をして、調子が悪かったら出社しないよう要請もしている。

ちなみに、調査した福井市保健所は、喫煙室や喫煙所の使用の可否については施設管理者が判断するものとし、保健所が会社に対して喫煙室の使用についてアドバイスなどは行っていない。

ただ喫煙室や喫煙所での感染リスクにかかわらず、そもそもタバコを吸う行為自体が感染リスクを高める。タバコで吸い込む有害物質は、気道や呼吸器の粘膜バリアや細胞組織などを破壊し、喫煙者を感染症にかかりやすくする。さらに、身体の免疫系の応答にも悪影響を及ぼすことが知られ、受動喫煙でも同じような悪影響がある。

タバコを吸うとインフルエンザや風邪、肺炎にかかりやすくなるが、これは年齢に関係なくタバコを吸う若い世代にとっても大きなリスクだ。新型コロナウイルスでも同じだろう。

タバコを吸う行為も感染リスクを高める

感染予防の基本は、入念な手洗いをして手指についたウイルスを体内に入れないことだ。喫煙者は、マスクをしながらタバコを吸うことはできないし、タバコは必ず手でつまんで吸い、互いに深く呼吸し合うためだ。タバコを吸う行為は、まさに感染のリスクを高めるといえる。

タバコや受動喫煙の害について研究している産業医科大学の大和浩教授に喫煙室での感染リスクについて話を聞いた。

──そもそも喫煙室の中はどのように危険なのでしょうか。

大和教授:喫煙室は改正健康増進法の規制により、外にタバコの煙が出ないような空気の流れを作らなければなりません。室内は隠圧の状態になっていて、中にこうした有害物質がこもりやすい構造になっています。タバコ煙の大きさは、微小粒子状物質であるPM2.5よりも小さい1μm以下です。これだけ小さいと肺の最深部まで吸入し、異物反応により肺に炎症を引き起こし、それによって全身の血管にも炎症が広がります。その結果、動脈硬化などの症状が出ることが知られています。

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