オンライン診療「初診解禁」で医療はどう変わる 次世代医療を担うベンチャーが続々登場

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「オンライン診療は医師が患者とただテレビ電話で話せばいいということではなく、スケジューリングや本人確認、決済など、システムには医療機関での実運用に必要な作り込みが必要。忙しい医療現場でも使いたくなるように設計している。LINEやZOOMでは対応できない」。メドレー代表で医師の豊田剛一郎氏はそう話す。

この3月にクリニクスを使ったオンライン診療の数は、前月比で倍増。同月の問い合わせ数も、コロナウイルス感染拡大前と比べて2倍以上の水準だという。

医療×ネットは広がるか

豊田氏は、「あくまでオンライン初診には慎重であるべきだと思う。平時であれば(身体所見が取れないなど)デメリットが大きいが、今は対面初診のリスクのほうが大きい。今回より多くの人がオンライン診療を知ってくれた。これまでの議論は実際の経験者がいないまま進んできた。意義と限界を理解したうえで、医療でネットを活用する許容度が上がっていってほしい」と話す。

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今回の初診解禁に関して日本医師会の松本吉郎常任理事は4月8日の記者会見で、「初診からのオンライン診療は、情報がない中で診断をするため、大変危険だと指摘してきた。今回の政府方針は、非常事態のもとでの例外中の例外という認識だ」と話している。医師会の中では以前からオンライン初診の誤診リスクを指摘する声が少なくない。

これに対し豊田氏は、「オンラインでの診断が難しければそこで確定せず、対面にすればいい。本質的な話ではない」と語る。

中国やアメリカではオンライン診療のシステムを手がけるベンチャーが多数生まれ、市場も拡大している。医療制度は大きく異なっており、単純な比較は難しいが、オンライン診療という選択肢の認識が広がることで、ここ日本でも医療の形が変わっていくのは間違いない。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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