緊迫する今こそ考えたい、「いい保育園」の条件 あなたの子が通う園に「余裕」はありますか?

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「その園に支給された運営費はその園で使う」ことを基本に、委託費の弾力運用は最低限にとどまる。施設の整備費などは生活クラブ本体の資金からいったん賄われるため、保育所を新規開設したとしても既存の保育所から委託費を流用する必要がない。

ほかの保育園でも園長経験のある、保育園ぽむスーパーバイザーの今井明代さんは、「ほかの園に見られるように、委託費の使途について法人本部の権限が強くては、保育のために現場で必要な遊具を買うこともままならず、保育士だけでなく、子どもの処遇も守られなくなる」と問題視する。

また、たすけあいネットワーク事業部の若松恵子課長は「現場の意見をもとに予算を作る。民間には特色を出せるいい面があるが、儲けるための参入では保育士は疲弊して辞めていく。生活クラブには、協同組合として働く人を大事にしたいという考え方がある。子どもが好きという純粋な気持ちで働いている保育士には、日々の悩みに応えながら、保育という仕事を好きになって続けてもらえるようにサポートしたい」と語る。

保育の質の向上には、保育士の処遇改善が不可欠

保育士の働きやすさは、人員配置も大きく影響する。ぽむ・砧では、0歳児クラスでも配置が手厚い。園児6人に担任が2人。ここで配置基準は満たすのだが、それに加えて1人以上の保育士が子どもの状況に応じてつく。保育士の年代は20代から60代まで片よりなく配置されている。

毛糸を麺に見立てて、おままごと。そんな様子をゆっくり見守ることができる余裕が大事だ(写真:筆者撮影)

冒頭の保育士、米塚さんは、「ゆったり、しっかり子どもと関わることができるため自然に愛着がわき、子どもの見せる成長に胸がキュンとなる。保育士に多い『持ち帰り仕事』もなく気持ちに余裕ができる。子どものことを考えるだけで幸せな気持ちになり、同僚と毎日、かわいいねーと言いながら楽しんで保育できる」と話す。

別の保育士の鎌田芳江さん(47歳)も「配置基準より1人でも多ければ、子どもの生活習慣について丁寧に保護者に伝えることができる。服を脱ぐ、靴下をはく、靴をはく。一つひとつ、自分でできるように、じっくり待って手伝う。職場全体に『かわいいよねぇ。天才!』と言いながら保育できる楽しさがある」と、居心地の良さを実感している。

丁寧な保育を実現できることが保育士のやりがいにつながり、質を高める好循環を生む。これは、安定した処遇のうえではじめて成り立つものだ。こうした保育士にこそ、大切な子どもを預け、保護者は安心して働き続けられるのではないか。

保育の質の向上には、保育士の処遇改善は必要不可欠だ。筆者が調べた保育従事者の賃金をはじめ、職員の人数、平均経験年数や財務状況などが現在、東京都がインターネットで公開しており、インターネットサイト「こぽる」(とうきょう子供・子育て施設ポータル)で誰でも確認できる。

コロナ問題の渦中では、日々変わっていく状況に振り回されてしまいがちだが、だからこそ、日頃の保育の真価も問われるのではないだろうか。その前提条件となる保育士の処遇や人員体制をチェックし、保育の質に目を向けたい。

小林 美希 ジャーナリスト

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こばやし・みき / Miki Kobayashi

1975年、茨城県生まれ。株式新聞社、週刊『エコノミスト』編集部の記者を経て2007年からフリーランスへ。就職氷河期世代の雇用問題、女性の妊娠・出産・育児と就業継続の問題などがライフワーク。保育や医療現場の働き方にも詳しい。2013年に「『子供を産ませない社会』の構造とマタニティハラスメントに関する一連の報道」で貧困ジャーナリズム賞受賞。『ルポ看護の質』(岩波新書、2016年)『ルポ保育格差』(岩波新書、2018年)、『ルポ中年フリーター』(NHK出版新書、2018年)、『年収443万円』(講談社)など著書多数。
 

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