緊迫する今こそ考えたい、「いい保育園」の条件

あなたの子が通う園に「余裕」はありますか?

園庭がない分、地域で良い関係を作って外遊びに出かける。写真は砂場で誕生ケーキ作りをする子どもたち(写真:筆者撮影)

公園に着いてすぐ、安保さんがサーッと回ってタバコの吸い殻などが落ちていないかチェックし、拾って歩く。筆者の知る限り、これができる保育士はなかなかいない。

確認が終わると子どもたちはカートを降りて自由に遊ぶ。砂場では、砂でケーキを作って木の枝を指してハッピーバースデー。男の子が、けやきの木の幹の皮の間にいる虫を見つけて驚いていた。時折、安保さんはポケットからメモ帳を出して、そうした子どもの様子を記録して保護者に伝える。

スポンジでハンバーガーセットの出来上がり(写真:筆者撮影)

1時間ほど外で遊んで保育園に戻り、給食の時間までまた自由に遊ぶ。女の子がスポンジ2つをくっつけ「ハンバーグ!」と言って米塚さんに差し出した。ハンバーガーと言いたかったのを察した米塚さんが「キュウリを挟んできて~」と頼むと、女の子がおままごとセットからキュウリを挟んで持ってくる。米塚さんが美味しそうに「あむっ」と食べる真似をすると女の子が満足そうな表情を見せる。その女の子は、今度はコーヒーカップも用意して、ハンバーガーセットを筆者にも振る舞ってくれた。

保育室には、スウェーデン製で世代を超えて音楽に親しむことのできるブンネ楽器(1つ当たり5万円前後)をはじめ、発達に応じた手作り玩具も多い。切った毛糸を麺に見立て、おままごと。遊びのなかで手を使うことが、そのまま実際の食事にもつながっていく。保育士の優しさが伝わる玩具が揃えられている。

11時30分頃、給食の時間になる。この日のメニューは、あんかけ焼きそば、ほうれん草のお浸し、こふきいも、野菜スープ。食材は生協のものが使われる。保育室のすぐ目の前に調理室があり、「やきそば、おいしー」という声を聞いた調理師が顔を出して子どもに声をかけ、保育士と食事の確認をする。皆、夢中で食べている。

野菜が苦手な子が、ほうれん草を口に入れたところを米塚さんに見せると「あ! 〇〇ちゃん、ほうれん草を食べたのー? ステキ~!」と褒めていく。その子は、前の席に座っている子が野菜を食べているのを見て、自分も食べてみたようだ。

そんな様子も見逃さず、担任の2人は「席を近くしてよかったのかも」と目を合わせた。そして、食後は米塚さんのハミングが子守唄になって、すやすやと眠っていく。子ども同士の噛み付きやひっかき、喧嘩など目立ったトラブルなく穏やかに午前中の保育が終わった。

「待機児童解消」を掲げ、保育園を増やしたけれど…

笑顔の保育士のもとで、よく遊び、よく食べて、よく寝る――。実は、そう簡単にできることではない。経験の浅い保育士しかいない、保育士の配置人員がギリギリ、仕事に見合わない賃金水準、満足に玩具が揃っていないという条件下では、保育士に余裕がなくなる。

すると保育士の思うようにできない子が叱りつけられ、時には違う部屋に閉じ込められる。食事中は静まり返り、食べるのが遅い子には餌やり状態で口にご飯を突っ込む。保育士による虐待まで起こっている現場は実際、存在している。

その背景には、安倍晋三政権のかけ声の下、急ピッチで保育園が作られたことがある。2013年度から2017年度までの間に約53万人分の保育の受け皿が整備された。2020年度末に待機児童を解消することが目標とされ、さらに保育園が作られている。その波に乗って、「保育は儲かる」と多数の営利企業が参入した。

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