3期連続赤字、政投銀に頼る北海道電力 500億円の増資で債務超過転落を回避へ

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昨年7月に審査を申請した電力会社の中でも、北海道電力は特に審査の進捗が遅れ気味だ。同社は当初、保有する泊原発1~3号機の全機について申請。しかし、1、2号機は「明確に準備不足で審査に入れる状況にない」と規制委に批判され、今年3月に補正申請を提出したばかり。

3号機も、重要な審査項目である基準地震動の策定などが遅れている。3月13日に九州電力の川内原発が優先的な審査対象に選定され、5月にも合格の可能性が出てきたが、泊原発についてそのメドは依然立っていない。

電気料金値上げも検討

こうした中で北海道電力は、さまざまな資本増強策を検討している。4月1日には渇水準備引当金190億円の全額取り崩しを経産省へ申請(認可されれば15年3月期の増益要因)。コストダウンとしては、15年3月期に修繕費繰り延べを中心に210億円を予定している。

また、昨年9月に続く再度の電気料金値上げも検討。ただ、今の経営不振の主な要因は、自らの原発安全対策の不備や新規制基準適合性審査に対する準備不足にある。ツケを顧客である電気利用者へ安易に押しつけることは許されない。

それだけに、自助努力としての追加コストダウンや資本調達(株主負担)を優先せざるを得ない状況にある。資本調達にしても、経営の先行きが不透明な中で公募増資は難しく、政府系で同社のメインバンクでもある政投銀に頼るしかなかったと見られる。

言うまでもなく、電力会社の経営危機や料金値上げを回避するために、原発再稼働を急ぐべきという議論は本末転倒だ。最優先されるべきはあくまで原発の安全性であり、厳格な審査。電力会社の経営問題とは切り離して考える必要がある。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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