現金給付が「今のままでは無駄足」に終わる理由 「必要な人に給付を届ける」ための2つの提言

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<海外の事例1>
アメリカ農務省・食品栄養サービス局は、低所得の家庭が栄養面で適切な低コストの食事を摂ることを補助し、食品の購買力を高めるためにSNAP(Supplemental Nutrition Assistance Program)を展開している。ここでは、EBT(Electrionc Benefit Transfer)カードというプリペイド式電子マネーが15年以上使われている。

<海外の事例2>
国連WFP(World Food Programme)は、飢餓と栄養不良をなくすために活動しており、2013年からレバノンのシリア難民に食料を購入できるEカードという電子マネーを配布している。

いったん仕組みさえつくれば、これ以降の支給での確認手続きや支給手続きを効率化することができます。今後の経済対策での給付金支給も速やかに実行できるでしょう。

電子マネーのメリット

また電子マネーなら、給付金を酒やタバコ、ギャンブルといった目的に使えないようにすることができますし、不正を減らすこともできます。電子マネーの利用期限を設けて、貯金ではなく使っていただくようにすることもできます。さらに、購買や使用の記録が残るので、次の政策立案の参考にすることができます。

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このように必要な方に必要なだけきちんとお金を届けることは、今の時代、技術的には十分に可能であり、意義の大きいことです。今回の緊急経済対策をきっかけに、早期の導入に向けて舵を切ることが望まれます。

新型コロナウイルスという未曾有の危機に直面し、こうした経済対策は「何でもあり」になりがちです。ただ、そういう中でも効果的・効率的で、社会をよりよくするやり方を模索したいものです。

また、政府はこれから順次、具体策を打ち出しますが、私たち国民は、「政府が決めたことだから」と無批判に受け入れるのではなく、少なくとも補正予算で本決まりになるまで声・思いを届けたいものです。

日沖 健 経営コンサルタント

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ひおき たけし / Takeshi Hioki

日沖コンサルティング事務所代表。1965年、愛知県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。日本石油(現・ENEOS)で社長室、財務部、シンガポール現地法人、IR室などに勤務し、2002年より現職。著書に『変革するマネジメント』(千倉書房)、『歴史でわかる!リーダーの器』(産業能率大学出版部)など多数。

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