それを支えるのは、中国への世界各国からのマネー流入だという。米国の金融緩和など世界各国が流動性供給を行うなかで、市場に大量に供給された資金のリターンをどう産むかという問題が生じる。そのとき、感染リスクを抑え込んだ中国は最も投資リスクが小さいうえ、5~10%の利益率が見込める市場として注目されるというのが黄氏の見立てだ。これによって中国の金融市場は外資の導入が進み、厚みを増すことができる。中国にとっては資本新市場の拡充と産業サプライチェーンの強化を同時に進めることができる100年に一度しかないチャンスだという。
この歴史的なチャンスを活かすために地方政府は外資がスムーズに参入できる条件を整備せねばならない。その条件とは、ソフト面では自由貿易試験区の整備などであり、ハード面では5Gなどの新型インフラの建設などだ。こうした手当てができれば、各経済圏に数兆元の投資が期待でき、新世代情報技術、ハイエンド設備製造など中国政府が掲げる「戦略的新興産業」のクラスターが形成できるという。
外資企業つなぎ止めのため必死に?
黄氏の提言には、経済正常化のための景気刺激策をバラマキで終わらせずデジタル経済の基盤を整備することに加え、金融面での対外開放を米中摩擦解決の切り札とするための思惑ものぞく。
しかし、新型コロナ問題で中国事業のリスクを再認識した外資系企業が、黄氏がいうほどに中国投資に魅力を感じるかは疑問だ。
中国に駐在する日系電機メーカーの幹部は「確かに中国のサプライチェーンは強いが、コロナショックは中国からの拠点の分散を促す契機になると考えるのが普通だ。だから中国政府は外資系企業をつなぎ止めようと必死になっている」と語る。
共産党の公約達成のために成長率を引き上げたい指導部と、経済の現場との間にはかなりの乖離がある。習指導部はこのまま強引に「V字回復」路線を突っ走るのか、より現実的な政策をとるのか。その綱引きの結果は、遠からず開催されるはずの全国人民代表大会(国会に相当)で発表される成長率目標と、具体的な経済政策で判明するはずだ。
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