堀江貴文「僕がロケット開発に熱中する理由」

ロケットが今後の日本経済を牽引する

ところが、燃焼は、実はまったくもって一筋縄ではいかない。燃焼は、燃料と酸化剤を混合して点火すると、化学反応で熱が発生する物理現象だ。ガソリンエンジンなら、霧状にしたガソリンを空気と混ぜて混合気という状態にして圧縮し、プラグで火花を飛ばして点火する。燃料はガソリン、酸化剤は空気中の酸素である。

この一連のプロセスにはさまざまな物理現象が関係している。まず空気という気体の中に霧状の液滴のガソリンがどのようにして混ざっていくかは、流体力学の範疇だ。圧縮では流体力学と熱力学の両方を考えねばならない。そこで爆発が起きると、今度は化学反応論や反応速度論といった分野の知見が必須となる。

熱から動力を取り出すプロセスは熱力学の議論そのものだし、余分な廃熱をどうやって逃がすかについては今度は伝熱論を知っておかなくてはいけない。燃焼という現象は、方程式が1つあって、これを解けば全部解決するというものではないのだ。物理学と化学の多分野が複雑に絡まり合っているのである。

とはいえ、現実に起きていることだから実験はできる。つまり、燃焼を理解したければ、膨大な量の実験を行って一つひとつ知見を積み上げていく必要がある。その知見に基づいて、今度は「いったいどんなふうに設計したら、よりよいエンジンになるか」を考え、部品を設計し、組み合わせてエンジンを組み上げねばならない(ちなみに、僕らのロケットエンジンの開発も、相当大変だった)。

「エンジンを開発する」という作業の核にあるのは「燃焼に関する知見を積み上げる」という、地味な作業の連続だ。これを行うことができた会社だけが、自動車メーカーとして生き残ることができたのだ。

エンジンほどのノウハウがいらない電気自動車

では、電気自動車はどうか。実は電動モーターにはエンジンほどの複雑かつ膨大なノウハウは必要ない。設計の基本は、電気と磁気に関する電磁気学という学問分野1つだけだ。しかも、電池技術の進歩によってこれから10年、20年のスパンで見ると、電気自動車のほうが内燃機関の自動車よりも性能がよくなる可能性が高い

テスラが自動運転に大変な力を込めているのは、決してイーロン・マスクの趣味ではない。電気自動車は本質として自動運転に向いている技術であることを、彼らが理解しているからなのだ。

このように、内燃機関を使う今の自動車と、電気自動車の特徴や使う技術、産業の構造を見ていくと、恐ろしい結論に到達する。山のようなノウハウを血のにじむような努力で会得し、世界を席巻し、日本を支える基幹産業となった日本の自動車産業――その強さの根幹は燃焼を中心としたノウハウを保持するサプライチェーンにあった。

ところが、そのサプライチェーンが、電気自動車というパラダイムシフトによって崩壊するのである。

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