堀江貴文「僕がロケット開発に熱中する理由」

ロケットが今後の日本経済を牽引する

もちろんこのことは、自動車各メーカーの首脳陣でもわかっている人は、とうの昔にわかっている。トヨタ自動車は2019年の業績が絶好調だったが、2020年に豊田章男社長は年頭のあいさつで危機感もあらわに「自動車産業だけでなくあらゆる産業が未来のビジネスモデルを模索しています」「誰にも未来は見えないし、わかりません。でも、たどり着きたい未来があり、見えない未来への道を必死で模索し続けている人にはわかるもの、感じ取れるものがあるのではないでしょうか」と訴えた。

間違いなく豊田章男社長は、この先、既存の自動車産業がどうなるかが見えているのだと思う。だから業績絶好調でも強烈な危機感を持って行動しようとしている。が、僕の見るところ自動車各社の取締役会には、まだあまり危機感を持っていない人が結構いるようだ。

電気自動車がもたらすのは「雇用の喪失」だ

この事情は、自動車部品を作っている、サプライチェーンを構成するメーカーにとっては、もっと切迫している。自動車メーカー本体はまだ、今まで培った自動車技術を使って、今度は電気自動車を作ろうという道がある。実際その方向で、各社動き始めている。

しかしエンジンやエンジン周辺の部品を作って自動車メーカーに納入している企業は、別の顧客を見つけるか、まったく新しい分野に進出するか、それとも業態を全面転換するか――いずれにせよ、今のままでは生き残ることができない。失敗すれば会社は潰れる。会社が潰れれば雇用が喪失する。

つまり、電気自動車が日本社会にもたらそうとしているのは雇用の喪失だ。サプライチェーンは崩壊し、生き残りに失敗した企業は潰れ、自動車メーカーそのもののが縮小し、雇用が失われる。雇用が喪失すれば、社会不安は増大し、経済は縮小してしまう。だから、日本社会としては、来るべき電気自動車の時代に向けて、雇用を維持・拡大する方法を考えて実行しないといけないのだ。

ここで宇宙が、自動車のサプライチェーンが移行する分野として浮上するのである。

宇宙用の電気推進系はどれも推力がとても小さい。はやぶさのイオンエンジンだと推力は0.7gfぐらい。つまりは1円玉を手に乗せたときに感じる重さよりも小さな推力しか発生しない。宇宙空間には空気がないから、そんな小さな推力でも何カ月も押し続けると大きな速度に到達できる。しかも燃費のよさという高性能も発揮できる。

しかしロケットは地球の重力に対抗して上に上がっていかねばならない。電気推進系ではそんなことはできない。燃焼を利用するロケットエンジンにしか、そんな大推力を発生させることはできない。

では、現在のロケットエンジンに変わる、もっと未来的な技術はあるかというと、これも見あたらない。1950年代から1960年代にかけては燃焼の代わりに原子炉の熱を使う原子力ロケットというものが研究されたことがある。確かに原子力ロケットは地上からロケットを飛ばすぐらいの推力を発生させることは可能だ。

だが、実際問題として、事故時の被害が大きくなりすぎるので、とてもではないが使えない。地上から宇宙空間へ、人や物を運ぶロケットの動力は、今後もずっと燃焼を利用せざるをえない。原理的にそうならざるをえないのだ。たとえ国際線を飛ぶ大型旅客機が電動化される時代が来たとしても、ロケットは今と同じ燃焼という化学反応を使うロケットエンジンで飛んでいるだろう。

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