堀江貴文「僕がロケット開発に熱中する理由」

ロケットが今後の日本経済を牽引する

そしてなによりも、ロケットの製造と開発は、旅客機のような大型航空機の開発・製造に比べると、世界的に見ても未発達だ。今参入すれば、社会制度の整備を並行して産業を大きくしていくことができる。社会制度とともに手を取り合って学びながら、産業が成長できるのだ。

つまり、だ。自動車の電動化により、自動車産業のサプライチェーン崩壊を目前にした日本の目の前には、ためにため込んだ燃焼のノウハウを生かせる唯一の産業として宇宙、それもロケットという分野が広がっているのである。

ただし、先頭を走っているスペースXですら、現状では年数十回の打ち上げを行っているレベルでしかない。自動車産業に比べれば、まったく産業規模は小さい。だからロケットに日本が傾注したとしても、現在の自動車産業のサプライチェーンのすべてを一気に引き受けるのは難しいだろう。

それでも、その一部は確実にロケットが代替できるはずである。産業はきっかけがあれば大きく育つ。そのタイミングに産業の核となる技術的な種を持っていないと、波に乗り遅れる。ここはロケットというものの産業規模の小ささを、今後の成長の余地が十分にあると考えるべきところではなかろうか。

普及は、いつ頃から一気にくるか

主に電池の技術開発のロードマップから類推すると、2030年頃と考えていいだろうと僕は思っている。経済産業省系の国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)という組織が充電可能な2次電池の技術開発ロードマップを出していて、それによると2030年には電池の容量は現在の2倍、寿命は1.5倍、電池重量と価格は半分と予想しているのだ。

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製品としての電気自動車は、航続距離が500㎞、価格は200万円以下で、15年は余裕で使えるというものになる。ここまでくれば、もう電気自動車の普及本番といっていいだろう。当然、それまでには自動運転技術も大変な進歩をしているはずで、内燃機関の自動車に勝ち目はないだろう。

だから、遅くとも今後10年でロケット産業立ち上げの目鼻をつけないといけない。昨年2019年、日本はH-ⅡAロケットを1機、固体で小型の「イプシロン」ロケット1機の合計2機しか衛星打ち上げ用ロケットを打ち上げていない。過去のいちばん多い年でも、2017年と2018年の各6機だ。「いったいこれでどうしろというのか」と言いたくなるほどの少なさだ。これでは産業は回していけない。

が、ロケット産業を短期間で一気に立ち上げる方法はわかっている。アメリカがすでに行って成功しているからだ。スペースXという会社は、アメリカの国の政策に乗ってあそこまで大きくなったのである。

このスペースXの成功を見れば、日本において一気にロケットを産業として立ち上げ、自動車産業のサプライチェーンを移行させるために必要なことは明らかだろう。

①国が巨大な計画を立ち上げること。そしてそれは今までにないロケット、つまり燃焼のノウハウを必要とする宇宙輸送システムに対する大きな需要が長期間にわたって発生する宇宙計画である必要がある
②宇宙輸送システムの開発に巨額の補助金を一気につけること
③国は技術には口を出さず、あくまで大口のサービス購入者として振る舞うこと

この3つである。アメリカが成功していることを後追いすればいいのだから、簡単なことだ。日本政府にこれができるかどうかが、2030年の日本経済がどうなっているかを決めることになるのだ。

――とまあ、こんなことを書くと「ホリエモンが巨額の補助金をISTに寄越せと言っている」とか言われるわけだが、ここまでで僕は何1つウソはついていない。間違ったことを言っていないという自信もある。むしろ「こんな単純なことが、なんで見えないのだろう」とすら思っている。営々と築き上げてきた自動車産業のサプライチェーンが崩壊しようとしている今、ほかにどんな対抗策があるというのだろうか。

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