コロナ危機で後手の政府が招いた混乱と不安 安倍首相に求められる最悪の事態への対応

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今回のコロナ危機で甚大な影響を受けている観光業、宿泊業、飲食店、交通運輸業等に携わる中堅、中小企業へ一日も早い無利子無担保融資を実現するため、融資を実行する全国の金融機関は重要だ。コロナ収束後に日本経済がV字回復をできるように、できるだけ多くの職場を守ってもらいたい。

原発事故時の政府対応と今の政府

中小企業支援を除けば、政府対応が遅れた対応は、2011年の東日本大震災での当時の政権における原発事故対応を想起させる。大津波への対応、全電源喪失時への対応を怠った政府と東京電力だ。

門田隆将著の『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五○○日』(PHP研究所)に書かれていたように、原発事故を防ぐチャンスは2度あった。1つは、2001年9月の同時多発テロ後、アメリカの原子力規制委員会が、原発がテロに襲われた場合の全電源喪失を想定し、それに対する対応方針を示したとき。それにもかかわらず、日本の政府と東電はこれに対応しなかった。

もう1つは、2004年12月の22万人もの死者をだしたスマトラ沖地震による大津波。このときも、同じアジアの地震多発地域での大津波という事態にもかかわらず、政府も東電も想定を超える津波への対策を講じなかった。福島第一原発は海面から10メートルの高さに位置するから、大丈夫だという根拠のない自信に陥り、想定を超える事態、最悪の事態への準備を怠ったのである。

緊急事態だった原発事故の対応で当時の民主党政権を担っていた菅直人首相は場当たり的な行動も繰り返し、後手後手の対応・危機管理ができていないと多くの批判にさらされた。

現在の政府の対応策には、最悪の事態を想定したうえでの先手の策はいまだなされていない。コロナ問題を過小評価しているのではないか。もしも、医療崩壊が起きている諸外国のような事態にはならないと、考えているのであれば、医療崩壊が起き、オーバーシュート(感染爆発)が起き、緊急事態に突入したときに、政府はどのように対応するのか。

安倍首相は就任後に「悪夢のような民主党政権」と繰り返し述べてきた。この国難ともいえる事態に今の自民党政権に何ができるのか、真価が問われている。

植田 統 国際経営コンサルタント、弁護士、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授

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うえだ おさむ / Osamu Ueda

1957年東京都生まれ。東京大学法学部を卒後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。ダートマス大学エイモスタックスクールにてMBA取得。その後、外資系コンサルティング会社ブーズ・アレン・アンド・ハミルトン(現PWCストラテジー)を経て、外資系データベース会社レクシスネクシス・ジャパン代表取締役社長。そのかたわら大学ロースクール夜間コースに通い司法試験合格。外資系企業再生コンサルティング会社アリックスパートナーズでJAL、ライブドアの再生に携わる。2010年弁護士開業。14年に独立し、青山東京法律事務所を開設。 近著は『2040年 「仕事とキャリア」年表』(三笠書房)。

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